Nibroll『see / saw』マレーシアーツアー
- Events
- 2014年2月22日〜3月2日
- クアラルンプール・パフォーミングアーツ・センター
About the event
2012年夏にYCC(ヨコハマ・クリエイティブシティ・センター)にて1ヶ月に渡るロングラン公演を行い、絶賛されたNibroll『see / saw』をマレーシアの2劇場にて上演します。
日本からの4名のメインダンサーに加え、地元ダンサーとのコラボレーションを行い、作品をよりブラッシュアップしてお届けします。
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ペナン公演
2月22日(土)20:30開演
@PenangPAC(ペナン・パフォーミングアーツ・センター)
http://www.penangpac.org
ご予約:ウェブ予約、または、Penangpac / Tel +604 8991 722 / 2722
クアラルンプール公演
2月28日(金)20:30開演
3月1日(土)20:30開演
3月2日(日)15:00開演
@KLPac(クアラルンプール・パフォーミングアーツ・センター)
http://www.klpac.org
ご予約:ウェブ予約、または、KLPac / Tel +603 4047 9000
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【コンセプト】
やがてシーソーが傾いて、
一方に乗った君が跳ね上がったときに見た風景を、
もう一方で沈む君が想像するところからはじめます。
「見た?」と聞くと「見た」と君は答える。
【レビュー】
炸裂する怒り、哀しみ、空虚感
石井達朗
鬱積した感情を若者たちの「身体の風景」に還元するようなニブロールには、いつも注目してきた。既存のダンス語法に頼らないばかりか、映像とサウンドとダンスがそれぞれ独立した魅力を放ちながら展開する方法論はポップでありながら、切実である。矢内原美邦は『前向き!タイモン』で岸田戯曲賞を受賞するなど、このところ劇作でも特異な才能を発揮していたが、彼女がダンスから少しでも離れていると、日本のコンテンポラリーダンスに大きな隙間ができてしまうように感じるのは私だけだろうか。
『see / saw』はそんな空白を埋めてあまりある、本格的なダンス作品。今という時代と社会に向けて、怒りと哀しみと空虚感が炸裂する。その根底に三・一一があるのは明らかだが、作品は具体性を排し、イメージの強度に訴える。生と死、記憶と現実、今見てること(see)と過去に見たこと(saw)。まさに「シーソー」のように揺れ動くコインの両面ーそんな二つの世界を分割するように白と黒を対比させたカミイケタクヤの美術が秀逸だ。舞台中央に置かれ、包帯をぐるぐる巻きにされたシーソーは、本作を象徴すると同時に、すべての傍観者でもあるのだろう。
冒頭、舞台奥で静かに動く小山衣美の中世的な存在感が魅力的だ。すぐに三名の少女が加わり、白地に朱の入った衣裳で楽しげに戯れる。しかしそのすべてがやがて訪れるカタストロフの前兆である。暗転になり風船がバチバチと破裂するあたりから、舞台は白から黒へ。すさまじい勢いで動く集団の衣裳は黒尽くめ。背景に映し出される住宅地や海は、かつてそこにあった光景なのか。中盤、全員の絶叫シーンがえんえんとつづく。叫びつづける以外の表現をすっかり閉ざされてしまったかのように。
ニブロールを中核で支えてきた高橋啓祐の映像は、実写・アニメ・抽象を巧みに使い分け、作品に鮮やかな色づけをする。また、スカンクのサウンドは、観る者の心をえぐるように作品を引っ張ってゆく。矢内原、高橋、スカンク、カミイケが共にひとつの方向性を共有しながら、それぞれの領域で創造力を全開しているのが快い。
家族の者、周りの者が亡くなり、見慣れた光景が崩壊し、すべてが眼の前から瓦礫のように崩れ落ちてゆくとき、人は何ができるのだろうか。そして舞踊家はどこを見つめ、何を表現するのか。一部の舞台人が取り上げているテーマではあるが、ニブロール結成以来十五年の蓄積を、安易な同情や感傷をしりぞけながら矢内原が渾身の力で投げかけた。欧米やアジアの他の国々とは違う独自の展開をしてきた日本のコンテンポラリーダンス。そこからだからこそ生まれたと思わせる傑出した作品である。
Ticket information
ペナン公演予約:Penangpac / Tel +604 8991 722 / 2722
クアラルンプール公演予約:KLPac / Tel +603 4047 9000
Schedule
2月22日(土)20:30開演
2月28日(金)20:30開演
3月1日(土)20:30開演
3月2日(日)15:00開演
Credits
- 振付
- 矢内原美邦
- 映像
- 高橋啓祐
- 音楽
- スカンク
- 美術
- カミイケタクヤ
- 照明
- 伊藤馨
- 衣装
- スズキタカユキ
- 出演
- 小山衣美、絹川明奈、山下彩子、クリタマキ