合理的配慮や障害の社会モデルなどについて学ぶ研修会の設計・実施

劇場向けインクルーシブ研修会

  • CATEGORY
  • イベント形態|トーク・シンポジウム, 参加型
  • precogの業務|バリアフリー, 教育普及, 人材育成
  • 表現分野|ダンス, 映像, 演劇
  • 開催年|2023

プロジェクト概要

株式会社precogでは、2024年4月に合理的配慮の提供が民間事業者においても義務化されたことを受け、舞台芸術業界において合理的配慮を適切に提供していくための研修会を実施しています。
これまでに、障害のあるアーティストや専門家らとの協力のもと、アクセシビリティに特化したオンライン劇場である「THEATRE for ALL」をはじめ、様々な事業や企画を立ち上げてきました。precogの実施する研修会では、舞台芸術の鑑賞サポートやユニバーサルな事業の制作・運営を担い、アクセシビリティに関わる多くの現場実践を重ねてきた制作会社だからこその知見やノウハウを広く共有し、人材を育成することで、舞台芸術界全体でアクセシビリティに関する取り組みを推進していくことを目指しています。

◼︎precogの業務
鑑賞サポート・客席設計、ワークショップ・セミナー、人材育成・人材派遣
◼︎プロジェクト期間
2023年8月〜2023年12月
◼︎プロジェクト体制
主催:株式会社precog
「日本の演劇」未来プロジェクト
文化庁文科芸術振興補助金(統括団体による文科芸術需要回復・地域活性化事業(アートキャラバン2))|芸術文化振興基金
◼︎関連リンク
イベント詳細:https://theatreforall.net/join/join-10928/
公式サイト:https://www.mirai-pjt.jp/n/nd16d3c3d2ec9

研修概要

研修会のレクチャーでは、合理的配慮が必要な理由やその具体的な提供方法だけでなく、合理的配慮を適切に提供するために必要な考え方である、「社会的障壁(バリア)」と「障害の社会モデル」について学ぶプログラムを提供しています。

2023年12月には「日本の演劇」未来プロジェクトのアートキャラバンサテライト企画として「【舞台関係者向け・研修・交流会】舞台芸術のバリアはどこにあるのか? 障害の社会モデルから考える合理的配慮」を実施しました。
東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター特任准教授である飯野由里子氏による合理的配慮に関するレクチャーを実施するとともに、ゲストとして俳優・手話エンターテイナーとして舞台や映画で活躍する聾者の那須映里氏をお迎えし、舞台芸術業界で感じるバリアやそのバリアを解決する具体的な実践例についてお話しいただきました。舞台芸術界全体で課題や解決策を共有していくため、研修会後には参加者同士の交流会も実施しています。

【舞台関係者向け研修・交流会】舞台芸術のバリアはどこにあるのか? 障害の社会モデルから考える合理的配慮

・日程‍:2023年12月21日(木)17:00~19:00
・会場‍:ロームシアター京都 会議室2
・定員:20名
・参加費:無料
・アクセシビリティ‍:手話通訳あり。参加にあたって不安やご要望がある方への個別対応を実施。
・プログラム
17:00〜18:00 講義(講師:飯野由里子)
18:00〜19:00 Q&Aフリートーク(登壇:飯野由里子、那須映里 進行:兵藤茉衣)

プロセス

■合理的配慮の義務化

2021年に障害者差別解消法が改正され、2024年4月1日から民間の事業者においても障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。しかし、合理的配慮は一律で決まった対応を提供すればそれで済むようなものではなく、その前提となる障害の社会モデルと社会的障壁(バリア)という概念も含めてその考え方を理解し、現場ごとに必要な対応や可能な手段を検討し実践していく必要があるものです。

■蓄積した知見を舞台芸術界全体へと共有するための研修会の設計

研修会の開催にあたっては、研修に参加する舞台芸術関係者への事前ヒアリングを実施。限られた条件や少ない予算で何ができるのか、何から取り組むべきなのか、アクセシビリティに関する取り組みを実施するにあたってどのように専門家とつながっていくことが可能なのかなど、その時々の現場の課題を改めて把握しながらプログラムを設計しています。

■より具体的で実践的なノウハウの共有

研修会では専門家による合理的配慮の基本的な考え方についてのレクチャーに加え、劇場や文化施設に適用した場合の具体的な取り組みや舞台芸術業界の課題はどこにあるのかなど、制作会社ならではの視点に基づいた実践的な知見やノウハウの提供も行なっています。合理的配慮が現場ごとに必要な対応や可能な手段を検討し実践していくものである以上、舞台芸術をはじめとする文化芸術業界における固有の事情を踏まえた実践をしていくことは極めて重要となります。障害当事者によるレクチャーや参加者同士の交流の場を設けているのも、研修会を通じてより具体的で実践的なノウハウを共有していくことを目指しています。

▷「社会のバリアに気づき、具体的な実践をすすめるために」舞台芸術関係者と考える、合理的配慮とバリアフリーの研修会 レポート
▷アートキャラバン・サテライト企画レポート 株式会社precog編

成果

■舞台芸術業界におけるアクセシビリティに関する取り組みへの意識の向上

舞台芸術界全体でアクセシビリティに関する取り組みを推進していくためには、関係する一人一人の意識を向上させていくことが重要です。舞台芸術の現場からは合理的配慮に対して「難しそう」「心理的ハードルを感じてしまう」などの声が聞かれることもあります。研修会は、正しい知識・考え方を提供するとともに同じ課題に取り組む仲間を増やすことを通じて合理的配慮をめぐる心理的なハードルを下げ、舞台芸術界全体でアクセシビリティに関する取り組みを推進していくことを目指すものです。

■劇場関係者同士のネットワークの形成

京都での研修会には、全国の公共劇場から多くの職員が参加しました。知見やノウハウの共有はもちろん、参加者同士の交流や意見交換を通して、合理的配慮やアクセシビリティに関する取り組みに舞台芸術界全体で取り組んでいこうという意識が生まれ、同じ課題に取り組む関係者同士のネットワークが形成されたことも研修会の大きな成果です。交流会では継続的に意見交換やディスカッションができる場があるといいのではないかという声も聞かれました。
なお、その場で挙手制で行った参加者へのアンケートでは「自身が障害当事者である、または、自身の身近に障害当事者がいる」と答えた人は全体の約半数弱、「これまですでにバリアフリーや社会包摂の取り組みを行なったことがある人」は3分の1程度、「バリアフリーや合理的配慮について、何か悩みや課題がある」と答えた人はほぼ全員という結果になりました。

ギャラリー

クレジット

主催:株式会社precog
「日本の演劇」未来プロジェクト
文化庁文科芸術振興補助金(統括団体による文科芸術需要回復・地域活性化事業(アートキャラバン2))|芸術文化振興基金