地域の中での出会いを創出するワークショップ・パフォーマンスの企画制作

新人Hソケリッサ!と公園で踊ろう! 3daysワークショップ・パフォーマンス

  • CATEGORY
  • イベント形態|パフォーマンス, ワークショップ, 参加型
  • precogの業務|イベント制作, 地域活性
  • 表現分野|ダンス
  • 開催年|2023

プロジェクト概要

劇場ではなく日常の場で踊り、路上生活者・子ども・障害のあある人など様々な人を巻き込んで作品を発表をしてきた〈新人Hソケリッサ!〉を講師に迎え、子どもから大人、障害の有無に関わらず、それぞれの身体から生み出される表現をみんなで一緒につくるダンスワークショップを開催。その成果を公園を舞台にパフォーマンスとして発表しました。

◼︎precogの業務
公演・イベント制作、鑑賞サポート・客席設計、ワークショップ

◼︎プロジェクト期間
2023年7月〜2023年12月

◼︎プロジェクト体制
主催:一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
企画制作:株式会社precog
助成:芸術文化振興基金、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京(芸術文化による社会支援助成)、東急こども応援プログラム

◼︎関連リンク
https://theatreforall.net/join/join-9787/
https://theatreforall.net/join/join-11369/

イベント概要

一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONALが2021年9月から池上エリアを中心に大田区の地域と共同して実施している、地域の課題にアートを通じて向き合うプロジェクト。その第3回目となる本事業では、路上生活者を中心としたダンス集団である〈新人Hソケリッサ!〉を講師に迎え、リハーサルと野外公演を含む計3日間のワークショップを実施しました。大田区民の憩いの場となっているタイヤ公園(西六郷公園)を成果発表の場とし、子どもも大人も、障害のある人もない人も、さまざまな生活、価値観を持った人たちが混ざり合いながら、参加する人々が自らの感性で作品を捉え、気づきを得ることを目指しました。

プロセス

■様々な人が混ざり合う場の選定

この事業では、ワークショップに様々な人が参加するだけでなく、成果発表の場においても多様な人々が混ざり合うことを目指しました。そのためにまず行なったのは、成果発表のパフォーマンスを披露する場所のリサーチでした。ワークショップ講師の新人Hソケリッサ!のメンバーとともに大田区内を歩き回る中、途中で立ち寄ったタイヤ公園(西六郷公園)で、親子連れやカップル、スペイン語や中国語を話す人々など、多様な人々が同居している姿を私たちは目撃することになります。この公園は、新人Hソケリッサ!主宰のアオキ裕キが前々から「いつかここで公演をしたい」と考えていた場所でもあり、公園で憩う人々がダンスを踊る人々とともにその場にいる風景が実現できればと考え、この場所を成果発表の場とすることが決定。タイヤ公園でのパフォーマンスはこれまで前例がなかったそうですが、交渉が実り、初の実現に至りました。

■開かれた創作現場の運営

年齢や障害の有無、ダンス経験も問わないワークショップ参加者の募集には1歳から74歳まで幅広い世代からの応募があり、抽選を経て9名が参加することになりました。ワークショップでは参加者に新人Hソケリッサ!のメンバーも入り混じり、言葉や絵から踊りを創っていきました。耳が聴こえづらい方でも音楽を体感してもらえるようにと、ワークショップの時点から音楽ユニット・カントジフアの生演奏付きでワークショップは進行しました。


<ワークショップの様子 撮影:岡本千尋>

■異なる者同士が出会うための成果発表の工夫

公園での成果発表にあたっては、公園で憩う人々とそこでパフォーマンスをする人という普段の公園では交わらない人同士が出会い、同じ空間に存在するためにいくつかの工夫を行いました。パフォーマンスには音楽の生演奏がつき、空間を回遊するようなかたちで進んでいくことでその存在感を示していました。出演者が手作りした紙帽子を公園にいる人たちに配ったのも出会いのための工夫の一つです。

日常の中で踊りと出会うーーー新人Hソケリッサ!が大田区でワークショップをしたら?

■世代や障害を超えて誰もが居心地良く鑑賞できる場づくり

作品を体験する手前のところでハードルやストレスを感じることがないように、新人Hソケリッサ!は決まった客席がなく自由に見方を選ぶことができる、屋外での無料公演を大切にしています。今回の成果発表会もその形式にならい、決まった客席を設けず、観客が自由に見方を選ぶことができる屋外での無料公演としました。
成果発表の際には公園の風景をなるべくそのまま活かしつつ、その場を訪れた人のそれぞれがリラックスできる居場所を自由に選べるようにするため、公園に元々あるタイヤに加え、寝転がれるゴザや背もたれのあるテラスチェアを用意しました。また、ろう者や難聴者の来場者には手話のできる2名のボランティアスタッフが場内案内の対応を行ないました。

成果

■多様な人たちがバラバラなまま同じ空間にいることの実現

1歳から74歳まで幅広い世代からの応募があったワークショップの参加者は、年齢も背景も参加の動機も多種多様。知的障害のある家族と参加した女性からは「弟と一緒に参加できるワークショップがほとんどないので、今回は参加できてとても良かった」という言葉をいただきました。他の参加者からも「多様な世代の方々がいて、身体の語彙も色々あって楽しかった」などの声があがりました。
成果発表当日、公園という場所で踊る参加者たちは、はじめは明らかに「異質」でしたが、音楽の効果もあってか徐々にその場に受け入れられ、パフォーマンスの終盤には公園の日常風景に溶け込んでいる様子が見られました。出演者と一緒に踊り出す子どももいれば関係なく遊び続ける子どももいて、多様な人たちが一つになるのではなく、バラバラなことをしたまま共存する空間を実現することができました。路上生活者、障害者、外国語話者、親、子どもなど、立場やバックグラウンドに関係なく、その人がその人のまま居ることが肯定・保障されている居心地の良い時間を生み出すことができました。

■大田区の方々との協働

今回のワークショップ・パフォーマンスは、2021年9月から池上エリアを中心に大田区の地域と共同して実施している、地域の課題にアートを通じて向き合うプロジェクトの第3回として実施されたものです。これまで実施してきた鑑賞系のワークショップではなく、初の創作ワークショップへの挑戦は、これまでに関係を築いてきた大田区の方々の様々な協力のもとに実現しました。
たとえば商店街の皆様にはチラシの配布にご協力いただき、おかげで多くの方にワークショップにご応募いただくことができました。また、タイヤ公園の利用にあたっては、大田区文化振興協会から施設管理者にご紹介いただき、発表公演の会場とすることが叶いました。発表会の終了後に大田区文化振興協会 文化芸術振興課の荻野祐子さんからは「いつもの遊び場であるタイヤ公園で不意に出会った他者の表現は、 改めて日常や地域に関心を持つきっかけとなったのではないでしょうか。 また、公共の場を介したアートプロジェクトは、美術館や劇場へ足を運ぶ機会のない人も楽しめるアートの入口でもあります。」とのコメントもいただきました。
アートプロジェクトは行政や街づくりに活かすこともできるものです。precogでは今後も引き続き、多様な人々がともにいることができる場を実現するための市民参加型のワークショップやパフォーマンスに取り組んでいきたいと考えています。

■地域内での出会いの創出

地域の皆様に様々にご協力いただく中で、地域内で普段は関わらない人々同士の交流も生まれました。本事業プロジェクトマネージャーの遠藤七海は大田区在住のダンサー・アーティストです。手話ボランティアとしてご参加いただいた地元スタッフの方は、このイベントへの参加を機に、ろう者の方と新たな出会いがありました。他にもアート関係の方とアクセシビリティ関係の方の交流が生まれるなど、運営にも多様な方が参加することで地域内で新たな出会いと交流が生まれたことはこの事業の大きな成果です。

ギャラリー

クレジット

公園で踊ろう! 3daysワークショップ・パフォーマンス
主催:一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
企画制作:株式会社precog
助成:芸術文化振興基金、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京(芸術文化による社会支援助成)、東急こども応援プログラム

公園で踊ろう! 野外パフォーマンス「まどろみおどり」
主催・企画制作:一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
運営:株式会社precog
協力:アオキカク
広報協力:THEATRE for ALL
助成:芸術文化振興基金、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京(芸術文化による社会支援助成)、東急こども応援プログラム