BRIDGE

- CATEGORY
- イベント形態|オンライン配信, トーク・シンポジウム, パフォーマンス, ワークショップ
- precogの業務|イベント制作, 配信事業, 教育普及, 人材育成, 広報PR
- 表現分野|演劇
- 開催年|2024
プロジェクト概要
本事業は、海外ツアーや国際共同制作といった展開の一歩を踏み出すその手前にいる、次世代のアーティスト及びスタッフの方々を対象とした育成プログラムです。「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))」の助成を受け、国際性が創造を豊かにするとはどういうことかという問いをスタート地点に、オンライン講座編の座学とクリエーション編の実践の2つのプログラムを実施しました。
公演・イベント制作、オンラインイベント企画、セミナー、人材育成、コミュニケーションデザイン・広報PR
◼︎プロジェクト期間
2024年5月〜2025年3月
◼︎プロジェクト体制
主催・企画制作:株式会社precog
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成)) | 独立行政法人日本芸術文化振興会
◼︎関連リンク
公式サイト:https://bridge-precog.studio.site/
活動概要
オンライン講座編では、国内外で活躍するアーティストやプロデューサー等を講師に迎えた連続講座を通じて、国際的な視野と知見に触れ、創作活動との繋がりについて学びました。対象者は舞台芸術に携わる人(作家、俳優、振付家、ダンサー、プロデューサー、スタッフ等)、創作における視野を広げたいと考えている人とし、年齢やキャリアの制限は一切設けず募集をしました。
クリエーション編では、公募によって選ばれた2組のアーティストが、オンライン講座で学んだ視点や考え方を踏まえつつ、それを自分たちの実践に活かすことを試みました。クリエーションには国際的な創作現場の経験豊富なプロフェッショナルがメンターとして並走し、その成果は、国内外の舞台芸術関係者が集うYPAM 横浜国際舞台芸術ミーティングの場で「BRIDGEショーケース」として披露されました。
A. オンライン講座編
会場:オンライン(※ライブ配信のみ)
料金:各回 500円(販売期限 各回開始1時間前)/通し券 1,500円(販売期限 9/18(水)18:30)
1. 複数の視点から捉える舞台芸術の国際シーン
日程:9月18日(水) 18:00〜20:00
講師:岩城京子(アントワープ大学演劇パフォーマンス学准教授)、ジャン・ユアン(キュレーター、プロデューサー)、マーティン・デネワル(フェスティバル・トランスアメリーク共同芸術監督)、レベッカ・ケジア(インディペンデント・キュレーター、ドラマトゥルク、プロデューサー)
※英語通訳あり
2. ローカルな視点を世界へ届ける方法
日程:10月9日(水) 19:30〜21:30
講師:マーク・テ、ジューン・タン(ファイブ・アーツ・センター)、ウィチャヤ・アータマート、ササピン・シリワーニット(For What Theatre)
※英語通訳あり
3. 創作者と支援者の関わりがひらく可能性
日程:10月30日(水) 19:30〜21:30
講師:島田靖也(独立行政法人国際交流基金 文化事業部舞台芸術チーム長)、久野敦子(公益財団法人セゾン文化財団常務理事)
4. 国際的な経験が創作にもたらす効果
日程:11月13日(水) 19:30〜21:30
講師:市原佐都子(劇作家、演出家、小説家、城崎国際アートセンター芸術監督)、中間アヤカ(ダンサー)
B. クリエーション編
日程:9月〜12月
会場:首都圏稽古場/オンライン
メンター:山口真樹子(ドラマトゥルク、通訳者)、山崎広太(振付家、ダンサー)(各団体に1名)
ゲストアドバイザー:市原佐都子(劇作家、演出家、小説家、城崎国際アートセンター芸術監督)、呉宮百合香(アートコーディネーター、ドラマトゥルク、舞踊評論)
参加団体:譜面絵画、新聞家/村社祐太朗
プロセス
■育成プログラムの立案と文化庁文化芸術振興費補助金への採択
precogは過去20年にわたって舞台芸術を中心とした国際共同制作事業や海外公演事業を展開してきました。本事業は、そこで蓄積してきた知見やノウハウを舞台芸術界に還元するとともに若い世代に共有することを目指して企画され、「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))」に採択されたことで実現したものです。
育成プログラムの立案にあたっては、海外展開を目指す手前の段階にいる、20代から30代の若手アーティストやスタッフの活動に「国際性」という視点を導入することで、それぞれの視野を広げ、その実践をより豊かなものとすることを目指しました。
■プログラム内容の調整
「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成))」への採択が決定した後、確定した予算を踏まえてプログラムの内容を調整していきました。オンライン講座編での座学とクリエーション編での実践を二つの柱とし、講座に登壇する講師やクリエーション編でアーティストに伴走するメンターをブッキングするとともに、クリエーション編の成果発表の場として国内外の舞台芸術関係者が集うYPAM 横浜国際舞台芸術ミーティングのYPAMフリンジ参加プログラムとして「BRIDGEショーケース」をセッティングしました。
オンライン講座のトピックや講師の選定にあたっては、近年の国際的な舞台芸術界の動向を踏まえ、欧米中心でなくアジアの視点を入れることや、国際的な活動で得たものを自身の活動に活かしてきた若い世代のアーティストの知見を共有すること、アーティストだけでなくプロデューサーや舞台芸術を支援する側といった多様な視点を導入することなどを意識し、これまでの活動でprecogが構築してきたネットワークを活かしたラインナップを実現しました。
クリエーション編については必ずしも作品の完成を目指すのではなく、あくまでこのプログラムで学んだことを実践し、試していくための場として位置づけ、参加アーティストの活動に寄り添い伴走するものを目指しました。
■広報と参加者の募集
情報の周知にあたっては、チラシの折り込みやWEB上の公募系掲示板への投稿などの広報業務によって広く参加者を募集するとともに、育成プログラムの対象として想定される若手のアーティストやスタッフに確実に情報が届くよう、個別に直接の声かけも行ないました。また、参加を検討するための機会として、プログラムの開始に先がけてオンラインでの説明会を実施し、プログラムに関する疑問点などを個別に質問をできる機会を設けました。
■プログラムの運営
オンライン講座編では、講師によるレクチャーに加えて講師・参加者の双方向のディスカッションや参加者同士の交流の時間を設けるなど、参加者が自身の思考をより深めていくためのプログラムを設計。クリエーション編では、複数回のメンタリングのそれぞれで異なるトピックを設定し、また、2組の合同ディスカッションの機会を設けるなど、アーティストが作品をつくるだけでなく、長期的な視野で自身の活動を考えていくためのプログラム設計を行ないました。
YPAMフリンジでのショーケースの実施にあたってはprecogが制作面をサポートしました。時にはアーティストとメンターの関係性構築の場を作り、本プログラムやショーケースをどのように活用するか、方向性を共に考えるなど、参加者とメンターと並走。また、YPAMフリンジを訪れる多くの海外ゲストにも作品を届けられるよう、翻訳者の紹介や字幕制作費の負担も行いました。
また、precogとつながりのある海外ゲストを観客として招き、クリエーション編の参加アーティストとprecogが持つ海外の舞台芸術関係者ネットワークとの接点を作り出すことも目指しました。
<キックオフミーティングの様子>
<上演後のアフタートークの様子>
■プログラム実施後の振り返り
オンライン講座編では毎回、講座の終了後にアンケートを実施。参加者からは、「レクチャーをきっかけに自分自身の活動を振り返ったり言語化する良い機会になった」「海外展開は目的ではなく手段であるということに気づいた」などの声が寄せられました。また、クリエーション編ではYPAMフリンジでのショーケース実施後に参加者・関係者全員での振り返りを実施し、参加アーティストがプログラムでの成果を振り返り今後の展望を改めて考える場を設けました。アンケートや振り返りで得られたフィードバックは2025年度以降のBRIDGEの運営に活かされます。
<クリエーション編の振り返りの様子>
成果
■舞台芸術における「国際性」について考える機会の創出
現代社会に生き、舞台芸術に携わる者にとって、実際に国際的な活動を展開するしないにかかわらず、「国際性」の視点から物事を考えることは極めて重要です。しかし若手アーティストの中には海外展開の必要を感じていない、手が回らないといった声もあったことを踏まえ、今回は「海外展開の仕方」ではなく、創作を軸により視野を広げ豊かな活動にしていくために、「国際性」の視点を取り入れるという視点で企画を行いました。
国際的な活動は何をもたらすのか、そもそも国際性とは何かについて、ローカルな取り組みとの関わりを踏まえつつ、異なる地域ごとの視点から、また舞台芸術に様々な立場で関わる方々の視点からの知見を共有し、それについて検討する機会を創出できたことはこの事業の最大の成果と言えます。参加者からも「普段の活動のなかではなかなか聞けない多様な視点からの考えに刺激を受けた」との声が寄せられました。
■若手アーティストが自身の活動を捉え直すための視点と機会の創出
クリエーション編においては若手アーティストがメンターやprecogスタッフとのやりとりを通じて自身の活動を言語化する機会を創出しました。また、ショーケースでの成果発表においては、言語や習慣、文化背景の異なる海外からのゲストを含め、これまでの活動とは異なる多様な観客の前で参加アーティストがプログラムに参加した成果を披露し、そのフィードバックを得ることで、今までとは異なる視点から自身の活動や作品を捉え直す機会も創出することができました。
■国際的な活動に関心を寄せる若手の可視化
オンライン講座編への参加やクリエーション編への応募を通じて、国際的な活動に関心を寄せる若手のアーティストやスタッフの存在が具体的な顔が見えるかたちで可視化されたことは、この事業の一つの成果と言えます。個別に活動をしているなかではなかなか共有する機会のない、しかし共通する興味関心や課題について意見を交わし、あるいは将来的な協働の可能性を見出すことができました。
■アーティスト育成プログラムのノウハウの蓄積
これまでprecogでは多くの作品をプロデュースしてきましたが、育成プログラムとして参加アーティストの取り組みに寄り添い支援する本事業での取り組みは、precogとしても新たな挑戦となりました。個々のアーティストの状況に応じ、試行錯誤しながら最善を模索した2024年度の取り組みは、参加者からのフィードバックと合わせて2025年度以降のBRIDGEなどの育成プログラムのためのノウハウとして蓄積されています。
ギャラリー
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譜面絵画『2Fご案内 新津々浦駅前プラザ』舞台写真 (撮影:大川あやの(譜面絵画)) -
譜面絵画『2Fご案内 新津々浦駅前プラザ』舞台写真 (撮影:大川あやの(譜面絵画)) -
新聞家『生鶴』舞台写真 (撮影:大川あやの(譜面絵画)) -
新聞家『生鶴』舞台写真 (撮影:大川あやの(譜面絵画))
広報制作物
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メインビジュアル
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チラシ1
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チラシ2
クレジット
プロデューサー:黄木多美子、水野恵美(以上precog)
プロジェクトマネージャー:遠藤七海
プロジェクトアシスタント:石塚晴日
プロジェクトデスク:兵藤茉衣(precog)
宣伝美術:美山有
主催・企画制作:株式会社precog
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(芸術家等人材育成)) | 独立行政法人日本芸術文化振興会