EPAD×THEATRE for ALL 2023

- CATEGORY
- イベント形態|オンライン配信, トーク・シンポジウム
- precogの業務|配信事業, バリアフリー
- 表現分野|ダンス, 映像, 演劇
- 開催年|2023
プロジェクト概要
2020年度から舞台芸術の公演映像、戯曲、舞台美術資料などを収集しデジタル・データとしてアーカイブ化してきたEPAD(舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業)。株式会社precogが運営するバリアフリー型の動画配信サービス「THEATRE for ALL」では、2022年度からEPADと協働し、音声ガイドや字幕、手話によりバリアフリー版の制作をした舞台芸術作品映像の配信を行なっています。2023年度はEPADの収集作品の中から11作品のバリアフリー対応を行いました。そのうちの10作品をTHEATRE for ALLで配信しています。また、2023年度は新たに、毎年秋に東京・豊島区池袋エリアを中心に開催している都市型総合芸術祭である東京芸術祭の一環として、障害の有無や様々な理由で劇場での公演に行きづらいと感じる人や、その家族が安心して参加することのできる鑑賞体験を提供する場としてユニバーサル上映会を実施しました。
EPADとTHEATRE for ALLはどちらも、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、演劇やダンスの公演、音楽のライブが次々と中止を余儀なくされ、いつ活動が再開できるかもわからなかった時期に立ち上がったプロジェクトです。これまでは舞台芸術にアクセスすることが難しかった方々にどうすればその魅力を届けることができるのか。precogではより多くの方に舞台作品映像を届けるために、EPADのアーカイブ事業と連携し、バリアフリーなオンライン劇場であるTHEATRE for ALLの配信サービス事業のノウハウを生かした取り組みを行っています。
イベント制作、バリアフリー動画配信、鑑賞サポート・客席設計、広報PR
◼︎プロジェクト期間
2023年4月〜2024年3月
◼︎プロジェクト体制
製作:一般社団法人EPAD
バリアフリー企画制作:THEATRE for ALL(株式会社precog)
文化庁文化芸術振興費補助金(統括団体による文化芸術需要回復・地域活性化事業(アートキャラバン2))|独立行政法人日本芸術文化振興会
◼︎関連リンク
公式サイト:https://theatreforall.net/epad2023/
活動概要
2023年度はEPADが権利処理を行った作品群からバラエティに富んだ11作品を選定し音声ガイドや字幕、手話によるバリアフリー版の映像を制作。そのうち10作品をTHEATRE for ALLで配信中。(2025年3月時点)。作品タイトルとprecogが担当した情報保障は以下の通りです。
■ままごと『わが星』
音声ガイド、バリアフリー字幕
■新人Hソケリッサ!『2021-2022「路上の身体祭典H!」新人Hソケリッサ!横浜/東京ダンスツアー』
音声ガイド、バリアフリー字幕
■やしゃご『きゃんと、すたんどみー、なう。』
音声ガイド、バリアフリー字幕
■マームとジプシー『cocoon』
音声ガイド、手話、バリアフリー字幕
■SPAC−静岡県舞台芸術センター『グスコーブドリの伝記』
音声ガイド、手話、バリアフリー字幕
■cube 20th presents Japanese Musical『戯伝写楽2018』
音声ガイド、バリアフリー字幕
■東京芸術劇場『気づかいルーシー』
音声ガイド、手話、バリアフリー字幕
■チェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』
音声ガイド、手話、バリアフリー字幕
■加藤諒、宇野結也、後藤大 他『舞台「パタリロ!」〜霧のロンドンエアポート〜』
音声ガイド、手話、バリアフリー字幕
■た組『綿子はもつれる』
音声ガイド、バリアフリー字幕
また、東京芸術祭「EPAD Re LIVE THEATER in Tokyo〜時を越える舞台映像の世界〜」のプログラムの一環として東京芸術劇場(東京・池袋)でユニバーサル上映会を開催しました。各回の上映終了後にはゲストと観客を交えた参加型トークも実施しました。
■た組『綿子はもつれる』 ユニバーサル上映会
日時:10月14日(土) 18:30開演(1時間40分)
鑑賞サポート:バリアフリー字幕、音声ガイド
参加型トークゲスト:関場理生(俳優/ダイアログ・イン・ザ・ダークアテンド)、南雲麻衣(パフォーマー/アーティスト)
■マームとジプシー『cocoon』 手話弁士つきユニバーサル上映会
日時:10月19日(木) 18:00開演(2時間30分)
鑑賞サポート:バリアフリー字幕、音声ガイド、手話
手話弁士:那須映里、長谷川翔平
手話監修:那須善子
参加型トークゲスト:藤田貴大(劇作家・演出家)、廣川麻子(TA-net理事長)、那須映里(手話エンターテイナー/役者)
■蜷川幸雄七回忌追悼公演『ムサシ』 ユニバーサル上映会
日時:① 10月20日(金) 14:00開演(3時間・休憩あり)/② 10月21日(土) 10:30開演(3時間・休憩あり)
鑑賞サポート:バリアフリー字幕、音声ガイド
参加型トークゲスト:① 10月20日(金) 美月めぐみ(バリアフリー演劇結社ばっかりばっかり)、今井彰人(サンドプラス/俳優)/② 10月21日(土) 石井健介(ブラインドコミュニケーター)、Nyanko(モデル/手話パフォーマー)
プロセス
■舞台芸術のバリアフリー版の制作をさらに進めるために
近年、舞台芸術界において、鑑賞における情報保障やバリアフリーの必要性は少しずつ認識されるようになってきました。しかし、特に新作や初演公演では制作スケジュールや予算の問題で十分な情報保障をつけることが難しいこともあり、まだまだ十分な施策が実施されているとは言えない状況です。precogでは、観劇にバリアを感じている方が触れることのできる舞台芸術の選択肢の幅を広げるため、舞台作品の上演におけるバリアフリー対応を推進するとともに、生の舞台公演より情報保障を付与しやすい舞台作品映像のバリアフリー版の制作とその配信も併せて推進しています。その一環として、2022年度よりスタートしたEPADとTHEATRE for ALLとの協働を2023年度も継続し、新たな舞台作品映像のバリアフリー版の制作と配信を実施することになりました。
■作品の選定
多様な作品を提供するという方針のもと、娯楽性の高い作品や実験的な作品、子供向け、2.5次元ミュージカル、過去の名作などバリエーションに富んだ11作品を選定しました。舞台芸術へのアクセスのハードルを下げるため、配信中の11作品のうち4作品は権利者にご協力いただき無料で公開しています。情報保障を付与しやすいという利点からすでに映像化されている作品を中心に選定しましたが、最新の作品に触れる機会も創出するため、2023年度に上演されたばかりの2作品のバリアフリー版の制作と配信にも取り組みました(チェルフィッチュ『宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓』、た組『綿子はもつれる』)。
■バリアフリー版映像制作のコーディネート
バリアフリー版映像の制作にあたっては、THEATRE for ALLがこれまでの活動で協働してきたバリアフリー制作団体や障害当事者らとのネットワークを活用したコーディネートを行いました。バリアフリー版映像制作のプロセスを通じてバリアフリー制作団体と舞台芸術関係者をつなげること、そして障害当事者の声をより広く届けることもEPAD×THEATRE for ALLの大きなミッションです。
バリアフリー映像制作のプロセスにおいてはまず、当事者との対話を通して作品ごとに制作する情報保障の種類を検討しました。たとえば手話と字幕はそれぞれに異なる特性を持っていて、作品ごとに最適な情報保障のかたちが異なってくるためです。さらに、作品との相性や各バリアフリー制作団体の得意とするジャンルなどを勘案し、最適なマッチングでのバリアフリー制作体制を実現しました。加えて、当事者によるクオリティチェックを実施し、それを制作会社へとフィードバックすることで、よりクオリティの高い情報保障を実現しています。
■ユニバーサル上映会のデザイン計画
ユニバーサル上映会の実施にあたっては字幕タブレットや音声ガイド機器の貸し出し、会場最寄駅からの送迎サポート、リラックスエリアの設置など個別のバリアフリー施策を実施するだけでなく、イベント全体のデザイン計画にも気を配りました。来場者がイベントの趣旨を理解しているかどうかが会場の雰囲気に直接関わってくるからです。
知らずに会場を訪れた方や偶然通りかかった方にもイベントの趣旨を周知するため、会場入り口には「今日はユニバーサルイベント」とアピールする立て看板を設置。「みんなで楽しむイベント」であることが直観的にわかるよう、看板には明るいトーンのデザインを採用しました。
会場ではスマートフォンのアプリや付箋などを活用し、見えない・見えづらい・聞こえない・聞こえづらい人も参加しやすいコミュニケーション環境を整備しました。
<左から、上映会の立て看板、スマホアプリでの感想共有イベントの案内 (撮影:宮田真理子)>
<左から、感想が書かれた付箋 (撮影:宮田真理子)、リラックスエリアの様子 (撮影:須藤崇規)>
成果
■多様なパートナーとの連携
バリアフリー配信とユニバーサル上映会の実現は舞台作品映像に関わるアーティスト・バリアフリー制作団体・障害当事者の三者との連携あってのものです。舞台芸術を専門とするprecogがコーディネートすることで、各作品に最適なチーム編成が実現しました。THEATRE for ALLは今後も、事業や作品の規模・性質に応じた柔軟なチーム編成をコーディネートし、EPADが推進する舞台作品映像のバリアフリー版の制作を支援していきます。
■交流の場としてのオンサイトでの上映会の実現
2023年度はオンラインを中心に活動を展開してきたTHEATRE for ALLが、一般の方向けの上映会を東京での初めてのリアルイベントとして実施することができました。舞台芸術関係者の注目度も高い東京芸術祭の一環として上映会を実施できたこともあり、会場では舞台芸術関係者と障害当事者との、あるいは観客同士での活発な交流や意見交換も行なわれていました。
各回の上映後には作品に関わるアーティストや、字幕や音声ガイドの制作に携わった障害当事者の方々をゲストに招き、観客も交えた参加型トークを実施。アンケートフォームを使って会場で出た意見を可視化しながらトークを進行し、創り手と観客双方の立場からの意見や感想を交わすことで、ともによりよい情報保障のあり方を追求する場が実現しました。
■手話弁士付き上映による魅力の発信と興味喚起
マームとジプシー『cocoon』の上映会では、手話弁士付きの上映を実施。多くのろう者の観客が来場し、潜在的なニーズの高さを可視化することになりました。ただ通訳するだけでなく演じる要素も大きい手話弁士付きの上映は、情報保障の枠組みを超えて、一つのライブパフォーマンスとして聴者の観客にもご好評をいただきました。今後もインクルーシブなイベントを実施していくにあたっての可能性が感じられたとともに、SNSで話題を呼んだことで舞台作品映像のバリアフリーの取り組みをより広く知ってもらうきっかけにもなりました。
■多様な舞台芸術作品のバリアフリー配信と取り組みの発信
多様な舞台作品映像のバリアフリー版制作を進めるのと並行して、THEATRE for ALLではウェブ記事や告知用の手話メッセージ動画、サインネームを紹介する個別動画などを通じた発信も行なっています。たとえば『舞台「パタリロ!」〜霧のロンドンエアポート〜』の配信にあたっては主演の加藤諒さんと手話弁士の緒方れんさん、手話版の映像制作を担当した今井ミカさんによる鼎談記事を発信するなど、情報保障を必要としている障害当事者の方々に届けると同時に、より多くの方に舞台作品映像のバリアフリーの取り組みや背景を知っていただくための情報発信に努めています。当事者とともに、より多くの当事者にバリアフリーな舞台作品映像を届けるための情報発信ができることもprecogの強みです。
ギャラリー
広報制作物
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事業紹介チラシ(面)
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事業紹介チラシ(裏)
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東京芸術劇場での上映会チラシ(面
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東京芸術劇場での上映会チラシ(裏)
メディア掲載情報
関連プロジェクト
クレジット
製作:一般社団法人EPAD
バリアフリー企画制作:THEATRE for ALL(株式会社precog)
文化庁文化芸術振興費補助金(統括団体による文化芸術需要回復・地域活性化事業(アートキャラバン2))|独立行政法人日本芸術文化振興会