EPAD×THEATRE for ALL
- CATEGORY
- イベント形態|オンライン配信, トーク・シンポジウム
- precogの業務|配信事業, バリアフリー, 教育普及
- 表現分野|ダンス, 映像, 演劇
- 開催年|2023, 2022
- SHOP
- オンデマンド
プロジェクト概要
2020年度から舞台芸術の公演映像、戯曲、舞台美術資料など約4300点を収集しデジタル・データとしてアーカイブ化してきたEPAD(緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業)。収集資料のうち約300本の舞台公演映像は、オンラインで閲覧可能な状態となるよう、関係する権利者からの許諾を得ています。precogが運営するバリアフリー型の動画配信サービス「THEATRE for ALL」では、EPADが2022年度に新たに権利処理を行った作品群のうち6作品について音声ガイドや字幕などによるバリアフリー化をし、そのうち5作品の配信をしています。
EPADとTHEATRE for ALLはどちらも、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、演劇やダンスの公演、音楽のライブが次々と中止を余儀なくされ、いつ活動が再開できるかもわからなかった時期に立ち上がったプロジェクトです。これまでは舞台芸術にアクセスすることが難しかった方々にどうすればその魅力を届けることができるのか。precogではより多くの方に舞台映像を届けるために、EPADのアーカイブ事業とバリアフリーなオンライン劇場であるTHEATRE for ALLの配信サービス事業それぞれのノウハウを生かした取り組みを行っています。
■precogの業務
バリアフリー動画配信・オンラインイベント企画、広報PR
■プロジェクト期間
2022年8月〜2023年1月
■プロジェクト体制
企画:緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化 支援事業(EPAD)、THEATRE for ALL
バリアフリー制作:THEATRE for ALL
■関連リンク
公式サイト:https://theatreforall.net/feature/epad22-23/
作品概要
2022年度はEPADが権利処理を行った作品群からダンス、演劇、ドキュメンタリー、アートなどバラエティに富んだ6作品を選定し音声ガイドや字幕などによるバリアフリー化。そのうち5作品を配信しました。作品の概要は以下の通りです。
■『瀕死の白鳥』『瀕死の白鳥その死の真相』[ダンス]
日本を代表するバレエダンサー・酒井はなが踊る、世界中のバレエダンサーに踊り継がれてきたフォーキン原作『瀕死の白鳥』と、演劇作家の岡田利規とともに取り組んだその新解釈バージョン『瀕死の白鳥 その死の真相』の2つのダンス作品。
<アクセシビリティ:音声ガイド、バリアフリー字幕>
■こまつ座『イーハトーボの劇列車』[演劇]
劇作家・井上ひさしが宮沢賢治の人生を描いた伝記劇。詩人、作家、音楽家、科学者、農業技師、教師、そして社会運動家とさまざまな顔を持つ賢治を松田龍平が演じました。賢治が上京のために乗った夜汽車を舞台に、賢治が書いた童話の世界の住人も登場します。
<アクセシビリティ:音声ガイド、バリアフリー字幕>
■ままごと 瀬戸内国際芸術祭2022 ドキュメンタリー『7日間のままごと』[演劇、ドキュメンタリー]
2013年から継続的に小豆島での作品創作、発表を行ってきたままごとが瀬戸内国際芸術祭2022で短編二作品を上演するまでを追ったドキュメンタリー。撮影・編集・監督を気鋭の映画監督・清原惟が担当しています。
<アクセシビリティ:バリアフリー字幕>
■オル太『超衆芸術 スタンドプレー』[アート、演劇]
『超衆芸術 スタンドプレー』はオル太が2017年から展開しているプロジェクト。都市に遍在する「勝敗と熱狂」の場における光景や言葉の記録、スケッチ、会話の断片を収集して再び演じることで同時代的な身体性を再構成します。
<アクセシビリティ:手話、バリアフリー字幕>
■マームとジプシー『めにみえない みみにしたい』(2019年)[演劇]
藤田貴大が子どもから大人まで一緒に楽しめる演劇作品として彩の国さいたま芸術劇場と共に初めて取り組んだ作品。原田郁子が音楽を、suzuki takayukiが衣装を担当しています。2019年に再演として上演した記録映像を初めて公開しました。
<アクセシビリティ:音声ガイド、手話、バリアフリー字幕>
■KAATキッズ・プログラム2022『さいごの1つ前』(2022年)[演劇]
劇作家・演出家の松井周が初めて手がけたキッズ・プログラム。天国と地獄の分かれ道で、忘れてしまった「生きていた頃の記憶」を探す主人公を日本演劇界を代表する俳優・白石加代子が演じました。
<アクセシビリティ:音声ガイド、バリアフリー日本語字幕>
(撮影:宮川舞子)
※「天王洲電市〜記録は感情を通電させる〜」にて展示上映
プロセス
■作品の選定
EPADが2022年度に権利処理した作品から、THEATRE for ALLの方向性や顧客のニーズを考慮してバリアフリー化と配信を行う作品を選定。アーカイブ事業としてのEPADの幅広さを示すとともにより多くの方に舞台映像を届けることを目指し、気鋭の若手からベテランまで、複数のジャンルから多様なアーティストの作品をラインナップしました。
■バリアフリー版映像製作のコーディネート
作品ごとの特徴を踏まえて情報保障製作会社や団体を選定し、バリアフリー版の映像製作を依頼。劇団など配信映像の権利者やアーティストとともに映像のチェックをし、作品をよりよく伝えるにはどうすればいいのかを検討しながら音声ガイドや字幕などの製作を進めました。舞台芸術に精通するprecogの強みを活かし、アーティストと作品に寄り添った情報保障の製作プロセスを実現しました。
■アクセシビリティに特化したプラットフォームでの配信
製作したバリアフリー版の映像はprecogが運営するアクセシビリティに特化した動画配信サービスTHEATRE for ALLで配信しています。
■舞台芸術界におけるアクセシビリティの意義と課題の共有
バリアフリー版の映像配信の認知度の向上と課題の共有のため、舞台映像の配信と合わせて舞台芸術業界のアクセシビリティの現状をめぐるオンライントーク(手話・文字支援あり)を企画・発信しました。また、EPAD事業を通して収集した舞台芸術映像を上映するとともにさまざまな専門家が登壇するトークを実施したイベント「天王洲電市」において、KAATキッズ・プログラム2022『さいごの1つ前』の音声ガイド版・バリアフリー日本語字幕版をiPadで展示しました。舞台映像とそのアーカイブに興味・関心を持つ方が多く訪れるイベントの会場でバリアフリー版の舞台映像に触れられる機会を設けることで、より多くの舞台芸術関係者にアクセシビリティの意義と課題を共有することを目指しました。
◉舞台芸術やダンスのバリアフリーを実現するために必要なこと/伊藤達哉、唐津絵理、中村茜
◉天王洲電市での展示
■映像の視聴を促し鑑賞体験をより豊かなものとするオリジナルコンテンツの企画・発信
プロジェクトに応じた多様なオリジナルコンテンツの企画・発信もprecogの強みです。上述のオンライントーク(手話・文字支援あり)に加え、ウェブメディアCINRAでも作家×障害当事者×字幕制作者による舞台芸術のアクセシビリティをめぐる対談記事を企画・発信しました。また、THEATRE for ALLでは鑑賞体験をより豊かなものとするためのオリジナルコンテンツとして、映像本編の視聴の前後に合わせて視聴するラーニング動画「2つのQ」を製作・配信しています。
◉2つのQ
▷【2つのQ】「瀕死の白鳥」 「瀕死の白鳥 その死の真相」出演:唐津絵理×酒井はな
▷【2つのQ】マームとジプシー「めにみえない みみにしたい」出演:藤田貴大×スズキタカユキ
■配信作品を活かしたバリアフリーイベントの展開
THEATRE for ALLではバリアフリー配信を行うだけではなく、様々な形で配信作品を活かした展開を行っています。EPADからの配信作品では『瀕死の白鳥』『瀕死の白鳥その死の真相』を使って目の見える人、見えない人が一緒に映像を見て、聴いて、語る対話型ワークショップ「ミるミる見るツアー 〜映像を聴いて、語るワークショップ〜」をオンラインで実施。また、長野県上田市を拠点とするNPO法人リベルテと連携し、障害者施設での上映会を実施しました。今後も福祉施設での上映会などのイベントを予定しています。
◉障害者施設での上映会
成果
■アーカイブ事業と配信プラットフォームの協働
アクセシビリティに特化した配信プラットフォームであるTHEATRE for ALLと協働することでEPADのアーカイブはより多くの人にアクセス可能なものとなり、同時に、舞台映像のアーカイブ事業であるEPADとの協働によってTHEATRE for ALLのラインナップはより充実したものとなります。2022年度に実施した5作品の配信によって、相乗効果で双方の意義を高める両事業の協働を継続的に展開していくための第一歩が実現しました。
■アクセシビリティの意義や課題の共有
舞台映像の配信と合わせて舞台芸術業界のアクセシビリティの現状をめぐるオンライントーク(手話・文字支援あり)や対談記事を発信し、その意義や課題を広く共有しました。
また、バリアフリー版の映像製作のプロセスにアーティストとともに立ち会い、よりベターなかたちを模索していくなかで、アーティスト側もprecog側も作品やバリアフリーに対する新たな視点を得ることができました。
■映像配信とその上映を通じた福祉への貢献
NPO法人リベルテでの上映会では、その準備段階から施設の利用者や職員と協力して企画を進めました。バリアフリーで映像を配信し、舞台芸術へのアクセシビリティを向上させるのみならず、配信映像を利用した上映会を企画し運営することで、利用者、職員、周辺地域の方々のコミュニケーションと関係づくりの促進に寄与しました。
メディア掲載情報
関連プロジェクト
関連@オンライン
クレジット
企画:緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化 支援事業(EPAD)、THEATRE for ALL
バリアフリー制作:THEATRE for ALL