ウィーン芸術週間からの委嘱による新作音楽劇の企画・制作

チェルフィッチュ × 藤倉大 with クラングフォルム・ウィーン『リビングルームのメタモルフォーシス』

  • CATEGORY
  • イベント形態|パフォーマンス
  • precogの業務|イベント制作, 国際事業, 広報PR
  • 表現分野|演劇, 音楽
  • 開催年|2023

プロジェクト概要

毎年5月から6月にかけて開催されているオーストリア最大級の国際フェスティバル・ウィーン芸術週間からの委嘱による新作音楽劇。演劇と音楽、それぞれの分野で挑戦的な創作を続けるチェルフィッチュ/岡田利規と藤倉大、そして世界トップレベルの現代音楽アンサンブルのクラングフォルム・ウィーンによる国際共同制作プロジェクトにおいて、株式会社precogは企画制作として長期のクリエーション・展開を見据えたスケジュールの策定、キャスティング・スタッフィング、資金調達、ツアー先となるパートナーとの連携、広報、創作の進行管理などを担当しました。

 

◼︎precogの業務
公演制作、海外ツアープロデュース、広報PR

◼︎プロジェクト期間
2020年5月〜

◼︎プロジェクト体制
委嘱:Wiener Festwochen
製作:Wiener Festwochen、一般社団法人チェルフィッチュ
共同製作:KunstFestSpiele Herrenhausen、Holland Festival、愛知県芸術劇場、​独立行政法人国際交流基金​
企画制作:株式会社precog
助成:(ウィーン公演)公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
(ウィーン、ハノーファー公演)文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流支援))|独立行政法人日本芸術文化振興会、公益財団法人野村財団
(アムステルダム公演)独立行政法人国際交流基金

◼︎関連リンク
公式サイト:https://chelfitsch.net/activity/2023/05/metamorphosis.html

作品概要

チェルフィッチュ/岡田利規と作曲家の藤倉大が演劇と音楽の新しい関係を生み出すことに取り組んだ本作は、美術家・彫刻家の金氏徹平とともに人とモノの新たな関係性を探求したチェルフィッチュの旧作『消しゴム山』に続き、人間中心主義への疑いから生まれた作品です。
本作では、チェルフィッチュの俳優陣6名と、世界トップレベルの現代音楽アンサンブルのクラングフォルム・ウィーンの演奏者7名によって作品が紡がれます。物語は住む家を突然追い出されそうになる家族の話から始まります。しかし、その家自体が人智の及ばない強大な力によって跡形もなくなると、人間の世界の外側に広がる圧倒的な存在が上演を支配し、まったく新しい世界が舞台上に立ち現れることになります。
岡田のテキストと藤倉の音楽、俳優の演技と演奏者の演奏、それらが舞台上に対等な関係で同時に現れるとき、観客の眼前には一体何が立ち上がるのでしょうか。

プロセス

■ウィーン芸術週間からの新作委嘱

本作のクリエーションはウィーン芸術週間からチェルフィッチュ/岡田利規に、藤倉大とクラングフォルム・ウィーンとのコラボレーションによる音楽劇の新作の委嘱があったことからはじまりました。委嘱を受けた岡田と株式会社precogのプロデューサーチームは、人間とモノとの関係を探求したチェルフィッチュの旧作『消しゴム山』から引き継いだテーマをさらに展開し、作品を通して演劇と音楽の関係を探求していくことを決定。2023年の初演に向けたクリエーションが動き出しました。

■クリエーションプランの策定

オペラなどの音楽劇では初演の2年前に戯曲が完成し、それを受けて作曲へと進んでいく一方で、本作では演劇と音楽の関係、そして戯曲の執筆と音楽の作曲を同時に進めていくというプロセスを実現するため、クリエーションの方法自体を探る2021年の日本でのワークインプログレス公演を経て2023年のウィーンでの初演に至る、3年間の断続的なクリエーションの長期プランを策定しました。並行してキャスティング・スタッフィングも進め、キャストにはこれまでチェルフィッチュ作品への出演経験のある方々を、スタッフには岡田と藤倉の創作手法を熟知する方々を迎えて、岡田と藤倉の初コラボレーションを十全に実現するための体制を整えました。

■資金調達と国内での共同制作パートナーの獲得

ウィーン芸術週間と協働し、作品をよりよいかたちで実現するための資金調達を行うため、プリコグでは日本側の助成金の獲得を試みました。また、ウィーン芸術週間はKunstFestSpiele Herrenhausen(ヘレンハウゼン芸術祭)とHolland Festival(オランダ・フェスティバル)の共同製作パートナーを獲得し、プリコグでは愛知県芸術劇場を国内での共同製作のパートナーに迎えました。

■コロナ禍でのワークインプログレス公演の実施

クリエーションの方法論自体を探るワークショップの成果発表として、2021年11月に東京でのワークインプログレス公演を実施しました。コロナ禍での開催となったため、ロンドンを拠点とする藤倉はオンラインでクリエーションに参加。クラングフォルム・ウィーンも映像での出演となり、別途、アンサンブル・ノマドと吉田誠に生演奏の演奏者として出演を依頼するなど、コロナ禍においてもより良いかたちでクリエーションとワークインプログレス公演を実現するためのスタッフや環境を弊社がコーディネートしました。

▶︎新作音楽劇 ワークインプログレス公演 チェルフィッチュ×藤倉大 with Klangforum Wien

<ワークインプログレス公演の様子(撮影:加藤和也)>

■長期的展望に基づく広報

2020年からプロジェクトがスタートした本作は、テーマとしては2019年初演の『消しゴム山』からの延長線上にあるものを扱いながら、日本での上演は2024年以降となることが決まっていました。弊社では2024年の日本初演に向け、日本の観客に本作への興味関心を喚起し、期待感を醸成するための長期的展望に基づく広報施策を実施しました。
2021年のワークインプログレス公演ではその映像をSTAGE BEYOND BORDERSとTHEATRE for ALL(音声ガイド版)という二つのプラットフォームで配信し、ステージナタリーとONTOMOに記事を出稿、2023年のウィーン初演後にはnoteで稽古場レポートを発信するなど、広報の一環としてクリエーションプロセスの積極的な発信も行ないました。
ウィーン初演時には現地での期待感の醸成のため、ウィーン芸術週間を通して地元メディアとの連携を行ないました。

音声と演劇をめぐって——チェルフィッチュ×藤倉大 with Klangforum Wien 新作音楽劇(ワークインプログレス公演/音声ガイド付き映像配信)での取り組み
演劇と空間の付き合い方を探る:『リビングルームのメタモルフォーシス』稽古場レポート (横堀応彦)

■円滑なヨーロッパツアーの実現、現地スタッフとの協働

ウィーンでの新作初演の直後にヨーロッパ2都市ツアーが予定されていた本作では、円滑なツアー公演を実現するため、新作としてクリエーションを進めつつ、並行してツアー先に提出するテクニカルライダーをまとめていきました。また、ウィーンがブラックボックスであったことに対して、ハノーファーはホッケー場、アムステルダムは音楽ホールと、会場によって条件が大きく異なっていたため、現地スタッフとも協働しながら各会場で作品にとってベストな環境を構築しました。


<左から、ウィーンでの次回ツアー地のテクニカル打合せ、ハノーファー・アムステルダム公演の様子>

成果

■異なる分野間での大規模な国際共同制作作品の実現

演劇・音楽それぞれの分野で国際的に高く評価されているアーティストによる国際共同制作をその方法論から立ち上げ、コロナ禍でのクリエーションを経て作品へと結実させたことはそれ自体が大きな成果です。ウィーン芸術週間という大規模な国際芸術祭からの委嘱作品としての初演に加え、ハノーファーとアムステルダムでのヨーロッパ2都市ツアーも実現。2024年度には東京・神戸・名古屋での日本国内での国内公演も予定しています。

■アーティストの新たな手法の獲得

岡田はこれまでも複数の音楽家と協働し創作をしてきましたが、本作において、初めて室内楽の現代音楽アンサンブルとともに、方法論を開発するところから取り組んだことで、これまでのチェルフィッチュの作品で用いてきた方法論を別の形で用いる新たな手法の獲得に至りました。

■分野を超えた観客の獲得

演劇・音楽それぞれの分野で国際的に高く評価されているアーティストによる国際共同制作ということでの注目度の高さに加え、各フェスティバルからの広報発信のほか、演劇分野の観客にはチェルフィッチュやprecogからの、音楽分野の観客には藤倉やアンサンブル・ノマド、クラングフォルム・ウィーンのSNSでの発信など、演劇・音楽双方の観客に作品が届くことを目指した広報施策の成果もあり、初演後のレビューでは演劇と音楽の関係やバランスなどに関して多様な意見が提出されました。そこには両者の関係に注がれる視線の多様さが反映されており、分野を超えた観客層に作品を届けることができたことを示していました。

■コロナ禍における長期プロダクションの柔軟な進行

2020年の委嘱から3年にわたる断続的なクリエーションと2021年のワークインプログレス公演、そして2023年のウィーンでの初演、ヨーロッパ2都市ツアーと、コロナ禍で先ゆきが不透明ななか、その都度ベストな施策を模索し、クリエーションを成功に導きました。その成果は2024年に予定されている日本国内公演へと引き継がれていきます。

ギャラリー

広報制作物

メディア掲載情報

プレスリリース

関連アーティスト

関連@オンライン

クレジット

作・演出:岡田利規
作曲:藤倉大
出演:青柳いづみ、朝倉千恵子、大村わたる、川﨑麻里子、椎橋綾那、矢澤誠
演奏:クラングフォルム・ウィーン (Lorelei Dowling, Jacobo Hernandez Enriquez, Benedikt Leitner,Florian Müller, Dimitrios Polisoidis, Sophie Schafleitner, Bernhard Zachhuber)

音響:白石安紀、石丸耕一
照明:髙田政義(RYU)
衣裳:藤谷香子(FAIFAI)
美術:dot architects
ドラマトゥルク:横堀応彦
技術監督:守山真利恵
舞台監督:湯山千景
テクニカルアドバイザー:川上大二郎(スケラボ)

音響オペレーター:遠藤剛、松葉燎真(MRD)
照明オペレーター(ウィーン、ハノーファー公演):葭田野浩介(RYU)
舞台監督助手(アムステルダム公演):松嶋柚子、堤田祐史

クリエーションワークショップ:アンサンブル・ノマド(演奏)、辻本達也(カヴァー)、永見竜生[Nagie](サウンドデザイン)

プロデューサー:水野恵美(precog) 、黄木多美子(precog)
クリエイティブ・アドバイザー:山口真樹子
プロダクションマネージャー:武田侑子
ツアーマネージャー:堀朝美
アシスタントプロダクションマネージャー:遠藤七海、平野みなの

英語翻訳:アヤ・オガワ
ドイツ語翻訳:アンドレアス・レーゲルスベルガー

宣伝美術:岡﨑真理子(REFLECTA, Inc.)

委嘱: Wiener Festwochen
製作:Wiener Festwochen、一般社団法人チェルフィッチュ
共同製作:KunstFestSpiele Herrenhausen、Holland Festival、愛知県芸術劇場、独立行政法人国際交流基金
企画制作:株式会社precog
エグゼクティブプロデューサー:中村茜
アドミニストレーションディレクター:斉藤友理
アドミニストレーション・オフィサー:平岡久美
プロジェクトアシスタント:村上瑛真
協力:オフィススリーアイズ、KAJIMOTO、株式会社キューブ、ナカゴー、急な坂スタジオ、山吹ファクトリー、公益財団法人セゾン文化財団、d&b audiotechnik GmbH & Co. KG.

助成:(ウィーン公演)公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
(ウィーン、ハノーファー公演)文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流支援))|独立行政法人日本芸術文化振興会、公益財団法人野村財団
(アムステルダム公演)独立行政法人国際交流基金