リアルイベントとオンラインを組み合わせたインクルーシブな映画祭の企画制作

まるっとみんなで映画祭2021

  • CATEGORY
  • イベント形態|オンライン配信, フェスティバル, ワークショップ, 参加型
  • precogの業務|イベント制作, 配信事業, バリアフリー, 教育普及, 地域活性, 広報PR
  • 表現分野|映像, 美術
  • 開催年|2021

プロジェクト概要

「まるっとみんなで映画祭」は、大人も子どもも、障害のある人も、言葉がわからなくても、みんなが楽しめるインクルーシブな映画祭として、株式会社precogが企画制作しました。

さまざまな人がまるっと混ざりあい、みんなで楽しむ鑑賞体験を。そしてオンラインのアクセシビリティを充実させることのその先へのチャレンジとして、親子連れや知的発達障害の方とも一緒に楽しむ野外上映イベントを開催。また、オンライン劇場「THEATRE for ALL」では、親子で楽しめる作品から国内外の話題作などを配信しました。

◼︎precogの業務
公演制作、バリアフリー動画配信、鑑賞サポート・客席設計、ワークショップ、地域芸術祭、コミュニケーションデザイン・広報PR
◼︎プロジェクト期間
2021年7月〜12月
◼︎プロジェクト体制

主催:株式会社precog、まるっとみんなで映画祭実行委員会(株式会社precog、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL)
助成:⽂化庁 ARTS for the future!
◼︎関連リンク
特設サイト:https://theatreforall.net/special/marutto_minnade21/

イベント概要

◉野外上映プログラム
ノンバーバルな作品やバリアフリー対応した映像作品の野外上映・じっとしていることが苦手な方や、小さいお子さんなど声を出しながら観たい方などでも、プライベートな空間でお話ししながら観たり、動きたくなったら自由に歩き回ることもできる”フレンドリー上映”が実現できるドライブインシアターなど、昼間と夕暮れとそれぞれの方法で鑑賞できるインクルーシブな野外上映会を開催しました。

・上映作品(しばふシアター)
知的障害のある方や未就学の子どもも楽しめる作品としてテレビ東京の人気シリーズ「シナぷしゅ」、「もるめたも」(原作:Reframe Lab アニメーション:ひらのりょう 音楽:OLAibi ナレーション:コムアイ)、チェコアニメ「ぼくたちものせて」(監督:フィリップ・ポシヴァチュ&バルボラ・ヴァレツカー)、地域の福祉施設や保育園の方々が描いた絵を動かす参加型作品「まるっとみんなでももたろう」(作:山本卓卓)などをセレクトし、芝生に寝転んだり思い思いの姿勢で楽しめる上映会を実施しました。

・上映作品(ドライブインシアター)
自閉症により2歳で言葉を失った少年がアニメーション鑑賞を通じて言葉を獲得していく過程を記録したドキュメンタリー映画「ぼくと魔法の言葉たち」(監督:ロジャー・ロス・ウィリアムズ)を、ドライブインシアター形式で上映しました。

 

◉配信プログラム
「もるめたも」「まるっとみんなで、ももたろう」や、ノンバーバル(非言語)で楽しむことができる、チェコアニメーションの名作「娘」、お弁当アーティストの宮澤真理Waltz」「Twins in Bakery」「Decorations」などの、お子さまと一緒に楽しめる作品。また、実作と理論の両面で問題提起してきた佐藤真監督の「まひるのほし」「花子」、実際に精神障害や社会からの疎外を経験した俳優達が芸術的な感性と演技力で革命・自由を表現する「マラー/サド」をはじめ、多様性についての理解が深まる、大人にも見ごたえのある作品を配信。その他、「シナぷしゅ」などの、作品の理解をさらに深めるラーニング動画「2つのQ」などを含め、バリアフリー対応した動画を配信しました。

プロセス

多様な人々がリアルに混ざり合うインクルーシブな場を

THEATRE for ALLはアクセシビリティに特化したオンライン劇場です。これまで劇場にアクセスしづらかった顧客層に対してアクセシビリティを高めていく仕組みづくりを行ない、配信だからこそのやり方でさまざまなバリアを超えるための取り組みをしてきました。

一方で、さまざまな人たちが同じ場で過ごすことにより生まれるものや発見もあります。特に障害者の方々との対話や物づくりにおいては、リアルな場でのコミュニケーションが重要です。

リアルなイベントを開催することで、開催地域に住む方々が、地域にいる他者に対する想像力を豊かにし、接する機会を生み出し、にソーシャルインクルージョンについて考えるきっかけを届けられたら。「まるっとみんなで映画祭2021」はこのような思いからはじまりました。

■知的・発達障害のある方や乳幼児とそのご家族へのフォーカス

オンラインの映像配信では視覚や聴覚におけるバリアフリー化に取り組んでいますが、今回はリアルイベントならではの取り組みとして、知的・発達障害のある方や未就学児童とそのご家族にフォーカスすることになりました。言葉がなくても楽しめる上映作品をセレクトしたり、子どもや知的・発達障害の方も一緒に参加できるコンテンツを企画しました。

■ユーザーや関係者へのヒアリング

映画祭の企画に先がけて実施したユーザーインタビューや福祉施設へのヒアリングで、知的発達障害の方や乳幼児・未就学児童がいるご家族は、そもそも出かけること自体のハードルが想像以上に高いということもわかりました。ヒアリングの結果は企画へと反映され、チラシでの表現等を通じて、より安心して来場しやすい情報発信や運営に役立てました。

◉theGreen × THEATRE for ALL オリジナルコミュニケーションボード
話し言葉によるコミュニケーションにバリアのある方、知的障害のある方や自閉症の方にも安心してお使いいただけるコミュニケーション支援ツール「コミュニケーションボード」を対象店舗でお買い物のお客様、チケットご購入者、ワークショップ参加者に配布するため、今回のイベントにあわせ、theGreenとTHEATRE for ALLが共同で作成しました。

◉イラスト
会場であるtheGreen内にアトリエショップを持つ障害者施設「いんば学舎・オソロク倶楽部」との協業で、チラシや会場のデコレーションの制作を行いました。「いんば学舎」に通う汾陽孝俊さんによるポップでわくわくするようなイラストを活用し、ワクワクと心躍る雰囲気やウェルカム感を伝えました。

■映画祭リアルイベント

映画祭当日は「アニメ制作のお絵描きテーブル」「しばふシアター」「ドライブインシアター」の3つのプログラムを実施しました。リアルイベントならではの楽しみが実現することを心がけつつ、新型コロナウイルス感染症の予防も考慮しながらの運営となりました。

◉アニメ制作のお絵描きテーブル
イベント当日にお絵かきテーブルで描いた作品がアニメーションになる企画を実施。劇作家・演出家の山本卓卓氏(範疇遊泳)によるオリジナルなストーリー展開の「ももたろう」のアニメーションを一緒に制作。おなじみの桃太郎の童謡をテーマに、登場人物などを描いたり、ぬりえで皆さんに参加してもらいました。お絵描きは最終的に音楽を加え、皆さんの絵を動かしたりすることで、アニメーション「まるっとみんなで、ももたろう」が生まれました。

◉しばふシアター
親子で親しめる作品を中心に上映。当日お絵かきした作品がアニメーションになる参加型プログラム「まるっとみんなで、ももたろう」をはじめ、人気子ども向け番組「シナぷしゅ」やチェコアニメなど、世代や障害の有無をこえて楽しめるバリアフリーでインクルーシブな体験をお届けしました。

◉ドライブインシアター
2017年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされた自閉症の少年と家族を描いた「ぼくと魔法の言葉たち」を上映しました。

■映像配信

映画祭での上映プログラムはオンライン劇場THEATRE for ALLで順次配信し、加えて、関連するラーニング動画「2つのQ」も配信しました。

成果

■地域性にあった企画の実現

障害のあるお子さんを持つご家庭へのヒアリングや地域の福祉施設・デイサービス・児童発達支援センターやイベント会場となる施設を利用する子育てコミュニティとの協働の成果もあり、特に参加型のアニメーション制作では障害のある方も子どもも参加できるような企画として結実できました。また、作品発表を「しばふシアター」で行ったため、親子や当事者の来場などを含め、映画を楽しむ多くの子どもたちの姿が多数見られました。

■ユニバーサルな上映会やイベント運営のノウハウの蓄積

映画祭に向けたヒアリングや準備、そして開催当日の運営を通じて福祉施設のニーズや状況を把握し、文化芸術イベントへのアクセシビリティの課題や、解決にむけてのアプローチを実体験を通じて学びました。ユニバーサルな上映会やイベント運営のノウハウは今後の企画提案やイベント開催にも活かしていきます。

■映画祭を通じ、子どもや知的障害のある方々との鑑賞体験を実現

今回、リアルイベントでの映画祭が実現したことで、オンライン配信だけでは実現しなかった新たな作品を紹介することができました。また、リアルイベントだからこそ届けられる、子どもや知的・発達障害のある方々へのプログラムを開発することができました。THEATRE for ALLではオンライン配信と合わせてリアルでのイベントを実施することでより多くの人により多様な作品を届けていきます。

ギャラリー

広報制作物

メディア掲載情報

プレスリリース

関連プロジェクト

関連@オンライン

クレジット

主催:株式会社precog、まるっとみんなで映画祭実行委員会(株式会社precog、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL)
助成:⽂化庁 ARTS for the future!
協⼒:theGreen
いんば学舎・オソロク倶楽部
ほっぷ(いんば学舎)
千葉ニュータウンナーサリースクール
チェコセンター東京
シアターサポート:Do it Theater
アートディレクション:清水貴栄
題字・グラフィックデザイン:美山有
イラスト提供:汾陽孝俊
会場装飾:安藤僚子(デザインムジカ)