TRANSLATION for ALL
- CATEGORY
- イベント形態|オンライン配信, トーク・シンポジウム, パフォーマンス, フェスティバル, ライブ, ワークショップ, 参加型
- precogの業務|イベント制作, 配信事業, バリアフリー, 教育普及
- 表現分野|ダンス, 映像, 演劇, 美術, 音楽
- 開催年|2023
プロジェクト概要
TRANSLATION for ALLは、アーティストが身体表現の翻訳を考え、作品へのアクセシビリティを「ALL=あらゆる人」に向けてひらく実験的フェスティバルです。
株式会社precogが運営するバリアフリーなオンライン劇場THEATRE for ALLによる初の芸術祭として企画、作品の創作から、事務局運営、イベント実施、オンライン配信などを行いました。
◼︎precogの業務
公演・イベント制作、バリアフリー動画配信・オンラインイベント企画、鑑賞サポート・客席設計、ワークショップ、コミュニケーションデザイン・広報PR
◼︎プロジェクト期間
2021年12月〜2023年7月
◼︎プロジェクト体制
主催:株式会社precog
助成: 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
◼︎関連リンク
公式サイト:https://theatreforall.net/translation-for-all/
作品概要
「身体表現の翻訳を考える」をテーマに掲げるTRANSLATION for ALLは、さまざまな障害がある状況に対して参加者それぞれの参加方法を想像し、アーティストが創意工夫する実験的な芸術祭です。2023年5月・6月に東京でのワークショップとリアル公演、オンライン配信、トークなどを実施し、身体表現、美術、映画、演劇など様々なジャンルの作品を発信しました。
また、作品発表に先駆け、アクセシビリティとテクノロジー、創作とバリアフリーなどについて、アーティストと意見交換を行ない、創作の過程を観客や障害当事者らと共有するトライ&エラーの場として「TRANSLATION for ALL LAB」を実施。「翻訳」に対する正解のない対話を通して多角的な視点を得ることを目指し、さまざまな立場の方とともにワークショップや公開稽古なども行ないました。
公演プログラム
2023年5月19日(金)〜21日(日) 『jactynogg zontaanaco ジャkuティー乃愚・存taアkoコ』 contact Gonzo × やんツー身体を接触させる即興的パフォーマンスを行なう芸術家集団contact Gonzoと、自律的な機械などを用い芸術表現の主体性を問うアーティストのやんツーによる、2019年制作のパフォーマンス作品「untitled session」を下敷きにした新作パフォーマンス。 |
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5月27日(土) 参加型演奏会「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」 蓮沼執太・梅原徹・宮坂遼太郎様々な音楽活動を展開している蓮沼執太、梅原徹、宮坂遼太郎の3人が開催する、誰もが参加することの出来る演奏会。 |
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5月27日(土) 『文明単位のラブソング』 AR三兄弟小林幸子と鎮座ドープネスが、日本の歴史、時代単位で聞こえてくる音を、過去から未来へむかって吟じるパレード。 |
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6月11日(日) めとてであそぼう!しゅわいんぷっと!ワークショップ 異言語Lab.手話の表現を試しながら、楽しく手話に触れることのできるワークショップ。声を出さず筆談や身振りを使ってコミュニケーションを行う。 |
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2023年7月3日(月) TRANSLATION for ALL 翻訳とアクセシビリティをめぐる総まとめ討論会参加アーティスト・関係者・作品をご覧になった方々による「アート作品と情報保障」をめぐるディスカッション |
配信プログラム
『Left and Right』Molly Joyce, Jerron Herman, Max Greyson, Austin Regan
作曲家・パフォーマーのモリー・ジョイス、振付家・ダンサーのジェロン・ハーマン、作家・音声描写家のマックス・グレイソン、演出家のオースティン・リーガンが、左側と右側の歴史的神話を検証するコラボレーション。 |
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『WHATEVER SCARES YOU』Back to Back Theatre
Breanna Deleoのデビュー1年目を記録した通過儀礼的な映画。Breannaは誰にとっても難しい、プロのアーティストを職業にしようとしている。さらには、彼女はニューロダイヴァーであることを自覚し始めている。両親は彼女の最大の味方であり、擁護者であって、Breannaを守りたいと思っているが、自分の道を見つけるには、1人でやっていかなければいけないこともあるのだ。 |
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『超衆芸術 スタンドプレー』オル太
2020年の東京オリンピックを目前に変わりゆく東京。宝くじ売り場、競艇場、駅の地下広場、高架下、工事現場を目撃する。路上に現れる不気味な笑い。新国立競技場の構造モデルから設計したスタジアムを再現した舞台で、あぶり出される都市の無意識が演じられる。 |
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『瀕死の白鳥』『瀕死の白鳥 その死の真相』Dance Base Yokohama
酒井はなによる『瀕死の白鳥』オリジナル版と、岡田利規演出、酒井はなと四家卯大のチェロによる、白鳥が自身の死因を踊りながら語る『瀕死の白鳥 その死の真相』の2つの公演記録映像。 |
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「文明単位のラブソング」手話付き映像
小林幸子と鎮座DOPENESSが歌唱とラップで参加。日本の歴史、時代単位で聞こえてくる音を、過去から未来へむかって吟じるパレード!AR三兄弟のアプリ作品『文明単位のラブソング』のために制作された楽曲で、蓮沼執太が作曲、編曲、サウンド・プロデュース、川田十夢(AR三兄弟)が作詞を担当。 |
プロセス
■企画の背景
precogはこれまで、THEATRE for ALLの運営や、アーティストやクリエイターをはじめとするさまざまな分野の専門家との協働のなかで、アクセシビリティや情報保障をつけた作品を発表してきました。この知見から、アーティストと協働し翻訳やアクセシビリティとの向き合い方をクリエーション段階から模索する実験の場の必要性を感じ、TRANSLATION for ALLの構想がはスタートしました。これは公演制作やアーティストプロデュースを担うアーティストプロデュース事業部と、アクセシビリティに対応したバリアフリー実装や配信などを担うprecogの強みを活かした取組みでもあります。
約1年の構想期間を経て申請したアーツカウンシル東京芸術文化魅力創出助成に採択され、2022年9月から企画の実現に向けた本格的な活動がスタートしました。
■プログラムの策定とアーティストらへの依頼
TRANSLATION for ALLのプログラムはリアル公演とオンライン配信の2軸で展開し、オリジナリティのある作品ラインナップを目指して策定しました。
リアル公演ではTHEATRE for ALLでの活動でも協働してきた蓮沼執太とAR三兄弟に新作を依頼。また、オンライン配信では、キュレーター/プロデューサーの田中みゆきとKYOTO EPXPERIMENTをゲストキュレーターに迎え、障害当事者による作品の配信も行いました。
■「誰もが当事者であり参加者である場」を実現するための広報・モニター
「誰もが当事者であり参加者である場」を実現するため、THEATRE for ALLのこれまでの活動で培ってきたネットワークを介して障害当事者や関係者への情報の周知に努めました。また、障害当事者の方に事前のワークショップにモニターとしてご参加いただき、その都度フィードバックをいただきながら制作を進めることで、よりよい場の実現を目指しました。
広報面ではさらに、広くアートに興味・関心を持つ層にもリーチすることを目指し、アートディレクションを気鋭のアートディレクター・グラフィックデザイナー田中せりに依頼しました。
■多様な人が参加しやすいフェスティバルの運営
TRANSLATION for ALLでは多様な観客が参加しやすいフェスティバルを実現するため、様々な施策に取り組みました。
会場へのアクセシビリティを向上させるため、車椅子利用の方や視覚障害のある方が利用しやすいバリアフリールート案内を用意するとともに、イベント当日は株式会社おともの協力のもと視覚障害者のための同行援護サービスを実施。場内での案内についても、株式会社おともによるスタッフ研修を事前に行いました。
公演会場では車椅子利用の方や手話話者の方のためのエリアを設置するとともに、立ってみたり座ってみたりを自由に選べる「自由エリア」を設けることで、より多様な方が参加しやすい環境を目指しました。また、来場者の意見を聞くため感想ボードも設置しました。
<左から、会場外スペースの様子、演奏会の様子、感想ボードに書かれた来場者の声>
■課題の共有とネットワーキング
TRANSLATION for ALL終了後の7月には「翻訳とアクセシビリティをめぐる総まとめ討論会」を実施。参加アーティスト・関係者・作品をご覧になった方々にご参加いただき、創作プロセスにおける発見や反省、事務局としての課題、TRANSLATION for ALLへの観客や有識者からの感想やフィードバックなども紹介しながら「アート作品と情報保障」をめぐる意見交換を行ないました。
成果
■アーティストによる新たな表現への挑戦と多様な作品の紹介
子どもから大人まで、また聴覚や視覚に障害のある方も一緒に参加できる演奏会を目指した、蓮沼執太・梅原徹・宮坂遼太郎による参加型演奏会「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」。そして手話つき映像を新規制作した、AR三兄弟による作品から生まれた楽曲『文明単位のラブソング』(作曲:蓮沼執太・歌:小林幸子・鎮座DOPENESS)など、「身体表現の翻訳を考える」ことからアーティストによる新たな表現を生み出せたことはTRANSLATION for ALLの大きな成果です。オンライン配信作品では、ゲストキュレーターの田中みゆきとKYOTO EPXPERIMENTの協力のもと、Back to Back TheatreやMolly Joyceなどの海外の障害当事者アーティストによる作品を紹介することができました。
■「誰もが当事者であり参加者である場」を実現するためのつながりと知見の蓄積
第一回目となった今回のTRANSLATION for ALLは、表現の実験性と情報保障としてのアクセシビリティをどう両立させるか、そしてそれを参加者にいかに誤解のないよう伝えていくかという点が、各公演や事後のディスカッションで議論の要点となりました。
創作段階から当事者とともに作品や場を作っていくことの重要性を改めて確認する機会ともなり、当フェスティバルを通してこうした先鋭的な表現への興味・関心を持つ障害当事者クリエイターや有識者と出会う結果となりました。
クリエーション期間中にはモニタリングや総まとめ討論会、そして各公演の会場に設置した感想ボードなどを通じて闊達な意見交換を実施。集まった知見は、今後も表現とアクセシビリティの関係性を障害のある方々と共に考え、新たな作品で挑戦していくための、基礎的な知識や課題の理解に活かしていきます。
事務局運営の面では、アクセシビリティや障害のある方を迎えるための研修などを通じてイベント運営のスキルの向上やノウハウの蓄積が進んでいます。これらの成果は、当フェスティバルをはじめ、様々な事業に役立てていきます。
■株式会社パルコとの連携によるバリアフリーイベントの開催
今回のTRANSLATION for ALLは株式会社パルコの協力のもと開催されました。往来の多い商業施設を会場とし、オープンスペースも活かして不特定多数の人目に触れる環境で当フェスティバルを実施できたことは一つの成果です。precogでは今後も様々な企業・施設との連携を模索し、継続的にイベントを実施していくことで、バリアフリーなイベントの取り組みをさらに波及させていくことを目指します。
ギャラリー
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撮影:加藤甫 -
撮影:加藤甫 -
撮影:加藤甫 -
撮影:加藤甫 -
撮影:加藤甫 -
撮影:加藤甫 -
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異言語Lab.ワークショップの様子 -
AR三兄弟手話撮影の様子 撮影:加藤甫 -
AR作品『文明単位のラブソング』のデモ映像より
広報制作物
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TRANSLATION for ALL メインビジュアル
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TRANSLATION for ALL のぼり
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TRANSLATION for ALL チラシ1
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TRANSLATION for ALL チラシ2
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TRANSLATION for ALL 感想ボード
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『文明単位のラブソング』メインビジュアル
メディア掲載情報
- 2023年3月26日:「TRANSLATION for ALL」 がリアルとオンラインで開催 - ステージナタリー
- 2023年5月9日:新たなアクセシビリティを模索する実験的フェスティバル「TRANSLATION for ALL」が開催されます | WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト
- 2023年5月16日:TRANSLATION for ALL(トランスレーション フォー オール)開催中 | ニュース | DIVERSITY IN THE ARTS TODAY
- 2023年6月21日:小林幸子×鎮座DOPENESS×蓮沼執太×川田十夢 文明の歴史をパレードする「文明単位のラブソング」配信(動画あり) - 音楽ナタリー
- 2023年6月21日:小林幸子、鎮座DOPENESS、蓮沼執太、川田十夢「文明単位のラブソング」2023.06.21 Release|SPACE SHOWER MUSIC
- 2023年6月21日:小林幸子×鎮座DOPENESS×蓮沼執太×川田十夢“文明単位のラブソング”がリリース | CINRA
- 2023年6月21日:小林幸子と鎮座 DOPENESSが歌唱とラップで参加、蓮沼執太作曲、川田十夢サウンドプロデュースの「文明単位のラブソング」配信リリース&手話付き映像も公開 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
- 2023年6月21日:小林幸子×鎮座DOPENESS×蓮沼執太×川田十夢による新曲「文明単位のラブソング」手話によるMV公開 | Daily News | Billboard JAPAN
- 2023年6月21日:小林幸子、鎮座DOPENESS、蓮沼執太、川田十夢による「文明単位のラブソング」リリース&MV公開 - CDJournal ニュース
- 2023年6月28日:AR三兄弟作品のテーマ曲“文明単位のラブソング”に小林幸子、蓮沼執太、鎮座 DOPENESSら参加 | NiEW(ニュー)
- 2023年7月10日:「歌」をARと手話で伝える アクセシビリティの新たな試み「TRANSLATION for ALL」に迫る | cinemacafe.net
- 2023年7月10日:「歌」をARと手話で伝える「THEATRE for ALL」の新たな試み。「TRANSLATION for ALL」に迫る 9枚目の写真・画像 | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-
- 2023年7月18日:小林幸子x鎮座DOPENESSx手話xAR!?前代未聞コラボの舞台裏とは?|QJWeb
- 2023年7月21日:歌、ラップ、手話…それぞれ目指した“対話”|<TRANSLATION for ALL>での共作過程 小林幸子 × 鎮座DOPENESS × 那須映里|Qetic
プレスリリース
関連プロジェクト
関連@オンライン
クレジット
主催:株式会社precog
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
■AR三兄弟「文明単位のラブソング」
■蓮沼執太×梅原徹×宮坂遼太郎 参加型演奏会「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」
主催:株式会社precog
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
協力:株式会社パルコ、株式会社おとも
参加型演奏会「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」プレワークショップ
主催:株式会社precog、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】、東急子ども応援プログラム
■contact Gonzo × やんツー「jactynogg zontaanaco ジャkuティー乃愚・存taアkoコ」
主催:株式会社precog
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、芸術文化振興基金
協力:ANOMALY、一般財団法人おおさか創造千島財団
ワークインプログレス
主催:株式会社precog、contact Gonzo
協力:一般財団法人おおさか創造千島財団
■異言語Lab.「めとてであそぼう!しゅわいんぷっと!ワークショップ」
主催:株式会社precog、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】、独立行政法人 国立青少年教育振興機構「子どもゆめ基金助成活動」