参加型演奏会「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」
- CATEGORY
- イベント形態|オンライン配信, パフォーマンス, フェスティバル, ライブ, 参加型
- precogの業務|イベント制作, 配信事業, バリアフリー, 教育普及
- 表現分野|音楽
- 開催年|2023
プロジェクト概要
「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」は、アーティスト・障害当事者と共に新たなアクセシビリティ表現の開発を目指す芸術祭「TRANSLATION for ALL」のプログラムの一つとして、株式会社precogが企画した参加型演奏会です。ワークショップなどを通じたプログラムの開発からイベント当日の会場運営までを一貫してprecogで担当しました。
◼︎precogの業務
公演・イベント制作、鑑賞サポート・客席設計、ワークショップ、人材育成・人材派遣、コミュニケーションデザイン・広報PR
◼︎プロジェクト期間
2022年10月〜2023年5月
◼︎プロジェクト体制
「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」
企画・構成・進行:蓮沼執太・梅原徹・宮坂遼太郎
コーディネート:米津いつか
TRANSLATION for ALL
主催:株式会社precog
助成: 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
◼︎関連リンク
公式サイト:https://theatreforall.net/join/translation23-play/
作品概要
「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」は様々な音楽活動を展開している蓮沼執太、梅原徹、宮坂遼太郎の3人が、誰もが参加することの出来る演奏会を目指して企画したプロジェクトです。ミュージシャンが奏でる楽器から出る音だけではなく、世界にあるすべてのものから、日常のさまざまな行為から、音楽は生まれます。自分のからだを使って「音」を出してみたり、ときにはだれかの「音」を聴いてみたり。大人、子ども、楽器が演奏できない人、聞こえない人、見えない人、車椅子を使う人、なかなか外出が難しい人など、誰もが一緒に“PLAY”できる演奏会は、参加したそれぞれが自身や他者のからだやこころのことを考えるキッカケとなることを目指して企画されました。
プロセス
■アーティストへの依頼
TRANSLATION for ALLのプログラムの一つを、precogから音楽家の蓮沼執太が集めた梅原徹、宮坂遼太郎とのチームに依頼したことから、「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」の企画はスタートしました。当社でこれまでアクセシビリティと文化芸術に関する事業に取り組んできたこと、そして 東京2020パラリンピックの開会式で「パラ楽団」を率いた蓮沼の経験を踏まえつつ、「誰もが参加することの出来る演奏会」の実現を目指しました。
演奏会当日は、企画の中心を担う3人のアーティストに加え、ゲストアーティストとしてギタリストの細井徳太郎とサウンドデザインの梶山紘平が参加。筋ジストロフィーで自宅で音楽制作活動を行なっている梶山は、インターネットを介して遠隔で演奏に参加しました。
■プレワークショップの実施
演奏会の本番に先がけ、様々な障害のある人もそうでない人も一緒に楽しめる場を考えるための企画として、2023年4月にさまざまな障害のある子どもとそのご家族等を対象としたプレワークショップ「おんがくかといっしょにあそぼう!」を実施。車椅子利用の方、ダウン症の方、視覚障害・聴覚障害のある方などにご参加いただき、体や音をつかって遊びながら、どうすれば「誰もが参加できる演奏会」が実現できるかを一緒に考えました。その成果は演奏会本番にも活かされることになります。
<プレワークショップの様子 撮影:米津いつか>
■様々なかたちでの演奏会への参加を可能にする工夫
演奏会の実施にあたっては会場へのアクセスから客席設計、当日の会場運営まで、様々な方がそれぞれのかたちで演奏会に参加できるよう工夫を行ないました。渋谷駅から会場となった渋谷PARCO屋上までは株式会社おともの協力のもと視覚障害がある方のための同行援護サービスを、会場受付では音声ガイドの貸し出しを実施。客席には車椅子エリアや手話が見えるエリアなどに加え、子供が自由に楽しめる空間として人工芝を敷いた自由エリアも用意しました。参加費は一般500円、小学生以下無料と親子連れなどでも参加しやすい低価格に設定しました。
アクティングエリアと客席とを緩やかに接続することで「誰もが参加できる演奏会」のコンセプトを空間設計としても実現。楽器やピンポン球など様々なものを使って自由に音を出したり、マラカス風の手作り楽器による振動や身体の動きを楽しんだりできる環境をつくり、参加者がそれぞれの方法で演奏会に参加できる形式を目指しました。また、視覚障害のある方に向けてはライブの音声ガイドを提供。聴覚障害のある方に向けては、演奏家の発言内容に対する手話通訳・UDトークを活用した字幕と併せて、音楽ライターの細田成嗣による「おしゃべり解説字幕」で、専門家による解説を文字で提供する取り組みにも挑戦しました。これは結果として障害のある方だけでなく、障害のない方にとっても抽象的な音楽空間と併せて解説を聴くという新たな鑑賞体験となり、インクルーシブなアプローチとなりました。
当日ふらっと来た方にも演奏会にご参加いただけるオープンな場を目指し、会場外のパルコ8F屋上には楽器に触れられるスペースを設置。開演前後の時間に来場者に楽しんでいただくだけでなく、一般の買い物客にも当フェスティバルを知っていただく機会としました。同時にこのスペースは視覚障害のある方や子どもにとって実際の楽器に触れてみる場としても提供しました。また受付付近には来場者が感想を残していけるスペースとボードを設置。個々の鑑賞体験を掘り下げつつ、開かれた場で公演の取り組みや意義を感じていただくきっかけとなりました。
<左から、会場外スペースの当日の様子、感想ボードに書かれた来場者の声>
成果
■誰もが参加できる演奏会への挑戦
演奏会当日は、子どもから大人まで、そして障害の有無に関わらず、多様な参加者がそれぞれのやり方で音を楽しむ空間が実現。子どもは体を動かしながら音を出したり、実際の楽器に触れる場面もありました。遠隔で肢体不自由の音楽家の参加も実現し、さまざまなアクセシビリティ上の取り組みも実践。また、渋谷という場所や会場となったPARCOの特性もあり、当日はふらっと立ち寄った外国人観光客の来場者も見られるなど、事前にご予約いただいた参加者の方以外にも開かれたオープンで多様な場を作り出すことができました。
■アーティストと共にインクルーシブな視点を学ぶ
演奏会の企画は蓮沼、梅原、宮坂の3人のアーティストと、フェスティバルの企画運営チーム、途中段階での様々な障害当事者の方々との対話を経て進められました。インクルーシブな視点をアーティストと共に学びながら進められたことは、これまで蓮沼、梅原両氏と共に障害者施設を訪れて創作したアニメーション『PAPER?/かみ?』をはじめとするTHEATRE for ALLでの継続的な協働が結実した成果です。
■今後も発展していく参加型演奏会の可能性
今回の企画を通じて参加型演奏会の取り組みは、今後に向けた発展の可能性を大いに感じさせるものとなりました。公演の規模や、お客様のご要望などに応じてアクセシビリティの工夫やチューニングができるフレキシブルさと自由度のあるものです。precogでは今後も各地での開催を模索していきます。
ギャラリー
広報制作物
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TRANSLATION for ALL チラシ1
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TRANSLATION for ALL チラシ2
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プレワークショップ チラシ
メディア掲載情報
- 2023年3月26日:「TRANSLATION for ALL」 がリアルとオンラインで開催 - ステージナタリー
- 2023年5月6日:TRANSLATION for ALL(トランスレーション フォー オール)開催中 | ニュース | DIVERSITY IN THE ARTS TODAY
- 2023年5月9日:新たなアクセシビリティを模索する実験的フェスティバル「TRANSLATION for ALL」が開催されます | WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト
プレスリリース
関連プロジェクト
クレジット
企画・構成・進行:蓮沼執太・梅原徹・宮坂遼太郎
コーディネート:米津いつか
TRANSLATION for ALL
主催:株式会社precog
助成: 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
参加型演奏会「PLAY?ーあそぶ?おとをだす?」プレワークショップ
主催:株式会社precog、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】、東急子ども応援プログラム