まるっとみんなで映画祭2022
- CATEGORY
- イベント形態|オンライン配信, トーク・シンポジウム, フェスティバル, ワークショップ, 参加型
- precogの業務|イベント制作, 配信事業, バリアフリー, 教育普及, 地域活性, 広報PR
- 表現分野|演劇, 音楽
- 開催年|2022
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プロジェクト概要
「まるっとみんなで映画祭2022」は、障害のある人もない人も、大人も子どもも、遠くに住んでいる人も、みんなで集う場をつくる、インクルーシブな映画祭として、株式会社precogが企画制作しました。映画祭を通じて多くの人たちに「インクルーシブとは何か」について考えてもらう機会を提供するため、出かけることが難しい人でも楽しめるオンライン配信と、誰もが気兼ねなく楽しめるリアルでのイベント・上映会の両方を開催しました。さまざまな種類のバリアフリー対応を行いながら、多様な作品の配信に加えてトークやワークショップ、そして那須地域での映画祭を実施しました。
◼︎precogの業務
イベント制作、バリアフリー動画配信・オンラインイベント企画、鑑賞サポート、地域芸術祭、コミュニケーションデザイン・広報PR、配信プラットフォーム運用
◼︎プロジェクト期間
2022年7月〜12月
◼︎プロジェクト体制
主催:まるっとみんなで映画祭実行委員会(一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL、株式会社81JOURNAL、Palabra株式会社、株式会社precog、株式会社MotionGallery、株式会社メジャメンツ)
制作:株式会社precog
◼︎関連リンク
公式サイト:https://theatreforall.net/marutto-minnade-22/
イベント概要
「まるっとみんなで映画祭2022」では、2022年7月から12月にかけてさまざまな映画を配信しました。音声ガイドや字幕をつけた最新の話題作や、子どもや知的障害のある方も楽しめるノンバーバルな作品、病や障害を抱える方々やマイノリティの方々をテーマとする作品のほか、作品についてさらに知りたい人に向け、監督や主演俳優のインタビューやトークイベント、オンラインで一緒に視聴しながら意見交換できるような配信イベントも開催。加えて、悩みや生きづらさを抱えた人たちに向けたインスタライブのお悩み相談なども実施しました。
リアルイベントでは、東海大学広報メディア学科の学生たちと協働し、盲ろう者のご家族や研究者の方々をお招きしてミニ上映会&トークを行ないました。
また、リアルでのメインイベントとして栃木県・那須で3日間の上映会「まるっとみんなで映画祭 in NASU」を開催。那須のさまざまな団体との連携のもと、上映会あり、展示あり、トークあり、ワークショップありの多彩なプログラムを実施しました。
プロセス
■インクルーシブな映画祭の継続開催へ
インクルーシブな映画祭の取り組みで継続して開催できているものはそれほど多くはありません。株式会社precog/THEATRE for ALLでは前年度の「まるっとみんなで映画祭2021」の成果を踏まえ、インクルーシブな映画祭の継続的な開催を目指し改めて「まるっとみんなで映画祭」の企画を立ち上げました。
■さまざまな地域との連携
初年度は印西(千葉県)で今年は那須(栃木県)での開催となりました。株式会社precogはかつて、2009年・2010年と那須で開催された芸術祭「スペクタクル・イン・ザ・ファーム」の制作・運営を担当していました。当時生まれた那須の方々とのつながりが今回の「まるっとみんなで映画祭 in NASU」の実現へとつながります。地域のアートxまちづくり事業者と観光やレジャー施設関係者らと話し合う中で、映画祭を通じて共生社会の実現を目指す当事業を同地域で実施することになりました。
■「まるっとみんなで」を目指した多様な施策の検討・実施
今回の映画祭ではTHEATRE for ALLでのバリアフリー映像配信(字幕や音声ガイドなど)に加え、参加型作品の上映、字幕や音声ガイド付きの上映会、障害当事者を交えたワークショップ、大学との連携、生きづらさに寄り添う相談室の開催、映画祭と那須観光を繋ぐインクルーシブなバスツアーの実施など「まるっとみんなで」を目指した多様な企画を実施しました。
◉参加型作品の上映
THEATRE for ALLの取り組みの一つである「劇場をつくるラボ」のオリジナルアニメーション『PAPER?/かみ?』は映像と音楽に合わせて紙をびりびり破いたりくしゃくしゃ丸めたりする参加型の作品。子供たちは目と耳だけでなく体も使って楽しく鑑賞していました。
◉配信をより楽しむためのイベント
配信に合わせてより作品を楽しみ、感想を共有し、思考を深めるイベントを実施。
映画『寛解の連続』では3回の共同視聴イベントを実施。映画の主演を務めるラッパーの小林勝行さんが各回で異なるゲストを迎え、視聴者はオンラインチャットや副音声、座談会などと合わせて映画を楽しみました。
映画『カメラを止めるな!』音声ガイド版では配信に合わせて上田慎一郎監督と“世界一明るい視覚障がい者”としてTEDスピーチが話題を呼んだ成澤俊輔さんによる座談会を実施。音でみるゾンビ映画の魅力を語り合いました。
タカハ劇団『美談殺人』ではTA-net理事長の廣川麻子さん、手話エンターテイナーの那須映里さん、そして同作の演出・脚本家の高羽彩さんとともに舞台における手話表現、ろう者の観客に向けた伝え方・届け方について考えるイベントを実施しました。
◉ワークショップ「目の見えない白鳥さんと、那須のアート散歩」
全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんを追いかけた新作ドキュメンタリー映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』の関連イベントとして白鳥さんと、映画の共同監督であり作家の川内有緒さんとともに私設美術館「N’s YARD」をめぐり作品を鑑賞するワークショップを実施。特別上映会のあとには白鳥さん、川内さん、そして映画監督の三好大輔さんを迎えてのアフタートークも行なわれました。
◉「Tokai Community × まるっとみんなで映画祭2022 ~『もうろうをいきる』上映&トーク
東海大学広報メディア学科の学生とのコラボレーション企画として盲ろう者の日常を描いたドキュメンタリー映画『もうろうをいきる』の上映会とトークを実施しました。
◉「お悩み相談!まるっとみんなでポップコーン」
映画祭ではInstagram live(インスタライブ)を使ったお悩み相談も実施。ドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤さんを「お悩みバスター」に、コメントなどを通じて視聴者も参加しながらのお悩み相談となりました。最後には、配信中作品の中から、おすすめの映画を相談者への映画の処方箋としてヴィヴィアン佐藤さんにはレコメンドしてもらいました。
◉「まるっとみんなでバスツアー」
今回の映画祭ではバリアフリー旅行の「おはようトラベル株式会社」が提供する東京からのバスツアーも実施。映画祭のプログラムに加え、バリアフリーな那須観光と宿泊を楽しめる1泊2日の旅が実現しました。
■地域芸術祭の開催に向けて
那須地域での開催に向けて企画を進めていくなかで「那須ショートフィルムフェスティバル」との連携や那須塩原市との共催なども決まり、現地の事業者や行政の方とアート、観光、バリアフリーについて考える勉強会やクロストークを実施するなど、那須の地域コミュニティと協働しながら映画祭の準備を進めました。食を通じて社会課題の解決を図ることを目的とし、障害者A型就労支援施設の工場を併設している株式会社GOOD NEWSが手がけた商業施設「GOOD NEWS NEIGHBORS」を会場としての開催が実現しました。
◉那須ショートフィルムフェスティバル × まるっとみんなで映画祭 バリアフリー特集上映
2006年から那須地域で開催されている那須ショートフィルムフェスティバルとまるっとみんなで映画祭の共同企画として音声ガイドとバリアフリー字幕をつけた4本の作品を特集上映しました。
◉「まるっとみんなで勉強会」アート × 観光 × ソーシャルインクルージョン勉強会企画
映画祭の開催に合わせ、アートを通じたSDGs/共生社会の実現を目指した研修と意見交換の場として勉強会を実施しました。那須地域での「アート × 観光 × ソーシャルインクルージョン」の取り組みを推進し、より豊かな地域の魅力を育んでいくため、バリアフリーやアクセシビリティに関する新たなムーブメント・知見・課題共有を推進する取り組みです。
◉[フレンドリー上映]夕暮れ森のシアター
「夕暮れ森のシアター」では子どもや言葉がわからない人でも楽しめるアニメーション作品を集め、開放的な森の中で自由に鑑賞できる上映会を実施。日中は同じ会場で親子で楽しめるワークショップも実施。フードやドリンクの提供も行なわれ、リラックスした雰囲気での上映会となりました。
■振り返りと今後への課題
会期の終わりには「総まとめトークシリーズ」を開催。企画ごとに工夫した点や、挑戦したバリアフリーの実践などについて、実行委員メンバーや関係者でディスカッションを行ない、多様な鑑賞者を想定した場作りや情報発信の課題、イベントを通して開拓した今後の可能性、映画監督や作り手の方々の体験に基づいた発見など、様々な視点から映画祭を振り返りました。
成果
■那須地域コミュニティにおけるつながりの創出
「まるっとみんなで映画祭 in NASU」の開催を通して那須のレジャー施設事業者・個人事業主・地域の福祉事業関係者・行政・まちづくりとアートの事業を生み出す地域団体など、異なる立場にいる方々が「バリアフリー映画」を通じて出会う場づくりと連携が実現しました。
■イベント導線におけるアクセシビリティ対応
バスツアーやバリアフリー旅行相談窓口を実施することで、イベントそのものだけでなくそこに至る導線も含めたアクセシビリティ対応を実現しました。バスツアーでは障害者モニター参加者と一般客の交流もあり、双方にとって学びの場が生まれていました。
■インクルーシブな映画祭開催のノウハウの蓄積とブラッシュアップ
地域コミュニティの方との勉強会やお客様対応の研修、あるいは障害当事者を交えたワークショップなど「まるっとみんなで映画祭」は2年間の開催を通してさまざまなノウハウを蓄積してきました。障害当事者、支援者、地域の文化事業関係者、運営スタッフ、などへのヒアリングや振り返りを通してさまざまな立場からの意見、感想を得ることで、今後の映画祭で取り組むべきことや課題も明らかになりました。今後も様々な地域で映画祭やバリアフリー上映会などの取り組みを推進していくためのノウハウを蓄積し運営スキルを磨いていきます。
■リアルな上映会だからこそ出会える観客
当社の自主事業であるバリアフリー配信サービス「THEATRE for ALL」を軸に始まった当事業ですが、リアルな上映会だからこそ紹介できる観客がいたり、行政から民間、アートから福祉まで、多様な属性にまたがる関心層を繋ぎ合わせることができるという強みを発見する機会となりました。これからも、劇映画やドキュメンタリー・舞台映像・アートアニメーションなど幅広いジャンルの映像作品を障害のある方々やその支援者の方々へ届けられるよう、障害のある人もない人も共に過ごす場を生み出せるよう、本事業での成果をさまざまな事業で役立てて参ります。
記録映像
ギャラリー
広報制作物
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メインビジュアル
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メディア掲載情報
- 2022年10月14日:バリアフリーの映画祭を通して、「その人のまま」でいられる社会に。作家・川内有緒さん×THEATRE for ALL・金森香さん|こここ
- 2022年10月17日:<イシヅカユウ『片袖の魚』インタビュー>トランスジェンダー役を当事者が演じる意味とは?映画に対する想いも語る「バリアフリー化で“みんな”が楽しめるように」|モデルプレス
- 2022年12月19日:働くことも、映画祭も「みんなが心地よい」を目指して。GOOD NEWSとTHEATRE for ALLのインクルーシブな場づくり|こここ
プレスリリース
関連プロジェクト
関連@オンライン
クレジット
まるっとみんなで映画祭 2022
主催:まるっとみんなで映画祭実行委員会(一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL、株式会社81JOURNAL、Palabra株式会社、株式会社precog、株式会社MotionGallery、株式会社メジャメンツ)
制作:株式会社precog
まるっとみんなで映画祭 2022 in NASU
主催:まるっとみんなで映画祭実行委員会(一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL、株式会社81JOURNAL、Palabra株式会社、株式会社precog、株式会社MotionGallery、株式会社メジャメンツ)
協力:那須ショートフィルムフェスティバル、GOOD NEWS、那須塩原市ART369プロジェクト実行委員会、那須高原 南ヶ丘牧場、チェコセンター東京
後援:那須塩原市、那須町、那須温泉旅館協働組合、公益財団法人栃木県観光物産協会