福祉施設に自由で新しいアート鑑賞を届けるプロジェクトの運営

劇場をつくるラボ 2023

  • CATEGORY
  • イベント形態|ワークショップ, 参加型
  • precogの業務|バリアフリー
  • 表現分野|映像
  • 開催年|2023

プロジェクト概要

「劇場をつくるラボ」は、福祉施設へ鑑賞体験を届けることを目的に2021年にスタートした事業です。1年目である2021年度は、障害のある方にとって適した鑑賞環境を模索するため、THATRE for ALLで配信された舞台芸術作品の映像を福祉施設で鑑賞するための空間づくりに挑戦。2年目である2022年度は、そもそも障害のある方が楽しめる作品が少ないのではないかとの気付きから、音楽家・蓮沼執太氏と映像作家・水尻自子氏が福祉施設を訪れ、利用者とのワークショップを通して障害のある人が鑑賞しながら音楽を奏でられるアニメーション作品『PAPER?/かみ?』を制作し、重度の知的障害者の方々が鑑賞できる映像作品や体験のあり方を模索しました。2023年度はさらに、『PAPER?/かみ?』をよりよいかたちで鑑賞するためのワークショップの開発に、たんぽぽの家アートセンターHANAの佐藤拓道氏、ワークショップデザイナーの栗田結夏氏とともに取り組みました。そうして開発した「音で遊べるワークショップ型上映会」を、福祉施設3箇所に加え、地域のユニバーサル映画祭、放課後デイサービス、学童、などで開催しています。株式会社precogは、THEATRE for ALL事務局として2023年度の事業の運営を担当しました。

◼︎precogの業務
イベント制作、鑑賞サポート・客席設計、ワークショップ、人材派遣、コミュニケーションデザイン

◼︎プロジェクト期間
2023年5月〜2024年3月

◼︎プロジェクト体制
主催:文化庁、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
企画:一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
企画・制作:株式会社precog(THEATRE for ALL事務局)

◼︎関連リンク
公式サイト:https://theatreforall.net/geki-tsuku-lab/

作品概要

2023年度の「劇場をつくるラボ」事業では「知的障害や発達障害のある人たちも一緒に映像鑑賞を楽しむためにはどんな工夫ができるだろう?」という問いから、障害のある人たちとともに鑑賞するワークショップ型上映会の開発に取り組みました。
「映画館や劇場等では、声を出さずに静かに鑑賞しないといけない」「映像はじっと画面に向き合って観るもの」という、社会で「当たり前」とされているマナーは、必ずしも誰にとっても当たり前のものではないはずです。
そのような前提のもと、2022年度の本事業で制作したアニメーション作品『PAPER?/かみ?』や、ノンバーバルで楽しめるチェコアニメーション『Fruits of Clouds』、怪獣映画『大怪獣ブゴン』などの映像作品を鑑賞しながら、声や体、身の回りにあるものを使って、作品に音をつけて鑑賞する「音で遊べるワークショップ型上映会」を開発し、5箇所で上映会を開催しました。

プロセス

■福祉施設へのヒアリング

一口に福祉施設と言ってもその環境や状況は様々です。2023年度は、個々の施設の課題に合わせてワークショップをコーディネートするため、福祉施設へのヒアリングから事業をスタートしました。能動的な鑑賞を前提としたアニメーション作品『PAPER?/かみ?』がどのようなものであるのかを施設の職員にお伝えしたうえで、施設へのヒアリングで寄せられた意見をどのように反映できるかを個々のケースに合わせて検討していきました。具体的にはヒアリングを通して「施設でアート活動を実践しているが、マンネリ化してきているため表現の幅を広げたい」「職員が忙しいため限られた時間内で、施設利用者の創造性を広げるために何ができるかを考えたい」などの意見が集まりました。

■プログラム開発ワークショップの実施

プログラムの開発にあたっては、2023年度の実施会場の一つである長野県軽井沢にある社会福祉法人育護会 浅間学園にご協力をいただきました。浅間学園へのヒアリングを参考に組み立てたプロトタイプバージョンのプログラムを同施設内で2日間実施。それをブラッシュアップしたものを基本型として完成させ、各実施会場へと展開していきました。

■ワークショップ型上映会の実施

プログラム開発にご協力いただいた浅間学園に加えて、福祉施設としては同じく長野県の軽井沢町保健福祉複合施設 木もれ陽の里と埼玉県の社会福祉法人みぬま福祉会 川口太陽の家の2箇所で上映会を実施しました。木もれ陽の里では、普段顔を合わせてる施設のメンバーだけでなく外部の方との交流を望む声を踏まえ、町内3カ所の施設から参加者が集まる上映会を実現。川口太陽の家では「鑑賞=じっとして観るものというイメージを変えたい」という意見を受け、実施日の2週間前から施設内で作品鑑賞の機会を設け、上映会への準備を進めました。(※川口太陽の家では準備は進めたものの、コロナウイルス感染拡大により上映会は中止となりました。)
また、福祉施設以外でも「まるっとみんなで映画祭2023 in KARUIZAWA」と「こぴあクラブ+ライト学童保育クラブ」で上映会を実施し、様々な方にご参加いただきました。

福祉施設に自由で新しいアート鑑賞を——「音で遊べるワークショップ型上映会」の説明書
障害のある人もない人も一緒に映画を楽しもう!「音で遊べるワークショップ型上映会」の現在地


<左から、浅間学園での実施の様子(撮影:たけなかあいこ)、木もれ陽の里での実施の様子(撮影:たけなかあいこ)、川口太陽の家での実施の様子>

<左から、まるっとみんなで映画祭2023 in KARUIZAWAでの実施の様子(撮影:たけなかあいこ)、こぴあクラブ+ライト学童保育クラブでの実施の様子>

■今後の継続的実施・展開に向けたフィードバック

今後の継続的な実施やさらなる展開を見据え、上映会終了後には実施会場ごとにヒアリングやアンケートを実施。施設の職員からは「利用者から次回を楽しみにする声が挙がり、映像鑑賞会であるだけでなく、出会いの場でもある企画なのだなと感じた」「この活動をもっと地域に開いて実施してほしい」「普段の支援の中でも思っている以上に擬音を使って利用者とやりとりしているのだと気付きがあった」といった声が寄せられました。取り組みの達成度や見えてきた課題などを確認し、プログラムへのフィードバックとブラッシュアップを行なっています。

成果

■既成概念を取り払った自由な鑑賞体験の創出

本事業においては、知的・発達障害等の当事者の鑑賞機会を創出することに加え、「じっとして静かにしていなければならない」という鑑賞する際の既成概念を取り払い、施設利用者と職員がともに能動的な鑑賞の可能性を見出すことに繋がったというフィードバックをいただきました。この発見は「鑑賞」の幅を広げ、「能動的鑑賞」という新たな選択肢を提示しました。

■施設利用者と職員との新たなコミュニケーションの促進

「音で遊べるワークショップ型上映会」は施設利用者と職員との間に新たなコミュニケーションの回路を開くものでもあります。ともに同じ作品を鑑賞することで、支援する側・される側の立場が取り払われ、また、プログラムを通して音を出すことによるコミュニケーションが行われることで、普段とは異なるかたちでの関係性が生まれるからです。参加した職員からは「利用者の新たな一面を発見する機会になった」という声も寄せられました。

■どこでもだれでも実施できる汎用性の高いワークショップの開発

「音で遊べるワークショップ型上映会」は、障害の有無だけでなく、人数や年齢、場所などにも関係なく、どこでもだれでも実施できるものを目指して開発されました。2023年度の事業において、福祉施設に限らず様々な方が混ざり合う場でこのプログラムを実施し、実際に障害のある方ない方、子どもから大人まで多様な方にご参加いただき、この理念を実現できたことは大きな成果です。

活動報告書


劇場をつくるラボ2023 記録集①(1〜15ページ)
劇場をつくるラボ2023 記録集②(16〜31ページ)
劇場をつくるラボ2023 記録集③(32〜40ページ)

ギャラリー

関連プロジェクト

関連@オンライン

クレジット

<2023年度>

ワークショップ型上映会デザイン/アドバイザー/ファシリテーション:佐藤拓道(たんぽぽの家アートセンターHANA 副施設長)
ワークショップ型上映会デザイン/プロジェクトマネジメント/ファシリテーション:栗田結夏
ファシリテーション協力/楽器提供/アドバイザー:NPO法人リベルテ
佃梓、馮馳

上映会パートナー:
社会福祉法人育護会 浅間学園:原田修(施設長)、川井孝幸
軽井沢町保健福祉複合施設 木もれ陽の里
軽井沢町保健福祉課 福祉係
社会福祉法人愛泉会 軽井沢治育園:井出和美(施設長)、川村俊介、阿部怜奈
軽井沢町社会福祉協議会 地域活動支援センター:塩川早人
社会福祉法人みぬま福祉会 川口太陽の家:小嶋芳維

機材協力:社会福祉法人育護会 浅間学園
作品提供協力:別府短編映画祭
上映作品提供:
『PAPER?/かみ?』:一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
『大怪獣ブゴン』:別府短編映画祭
『Fruits of Clouds』:NEW EUROPE

記録映像・写真:村上邦久、たけなかあいこ(|+|=| STICK AND LADDER S.A.) 、輕井澤二十四節氣

報告書編集:春口滉平
報告書デザイン:綱島卓也

企画・制作:株式会社precog(THEATRE for ALL事務局)
企画ディレクション:中村茜
プロデューサー:星野麻子、兵藤茉衣
プロジェクトマネジメント:林芽生

文化庁令和6年度「文化庁障害者による文化芸術活動推進事業」
主催:文化庁、一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
企画:一般社団法人DRIFTERS INTERNATIONAL
運営:THEATRE for ALL事務局(株式会社precog)