アジアの移動型エクスチェンジプロジェクト

Jejak- 旅 Tabi Exchange: Wandering Asian Contemporary Performance 2021 NAHA @ONLINE

  • CATEGORY
  • イベント形態|オンライン配信, トーク・シンポジウム, ワークショップ, 参加型
  • precogの業務|イベント/公演制作, 国際交流, 地域活性, 広報・PR
  • 表現分野|ダンス, 演劇, 美術
  • 開催年|2021

プロジェクト概要

アジアのアーティストたちと複数都市を巡回し3年に渡って開催したプロジェクト「Jejak-旅 Tabi Exchange:Wandering Asian Contemporary Performance」。「Jejak(ジェジャック)」は、マレーシア語で「歩み」、インドネシア語で「足跡」を意味します。

このプロジェクトは、舞台芸術におけるアジア諸地域ならではの文化、言語、社会、政治的な背景をよりつぶさに感じとるため、アーティストたちと共に”旅”することを主軸に企画されてきました。それは、飛行機で空中を高速移動するような旅ではなく、船や電車で移動する時のように、地域を移すごとに風景や、風の匂い、入手できる食物などの変化を感じられるようなスローな旅。それを通じて、アジアの創作環境や、作品が生まれる背景を感じ合うことを目指した旅です。

そして、アジア各地のメガシティで2015年あたりから急速に展開された芸術祭や見本市で形成される大規模でグローバルな”文脈”が顕在化する中、「Jejak」はアジアのローカリティにより接近できるように計画することで、それぞれの地域性に即した同時代舞台芸術の生態系を理解し合い、その独自の”文脈”を認識し、言語化することを、喫緊の課題と捉えて、2017年に立ち上がりました。

2018年からはジョグジャカルタ、クアラルンプール 、ロハスシティでの開催を予定していましたが、パンデミックの影響でそれ以降の計画が叶わなくなり、2021年まで開催を延期。渡航制限などの長期化の影響で、昨年に引き続きオンラインでの開催を決定しました。

オンラインではあっても、ローカル×ローカルの交流を重視して設計されたのが今回のプログラム。那覇というローカリティを、ビサヤ諸島、マニラ、クアラルンプール 、ジョグジャカルタと接続し、作品だけでなく、作家の創作プロセスやその社会的な背景、さらにはその地域特有の表現メソッドや創造環境について各地の視点を交えて対話したとき、那覇で生まれた創造性がどのように照らし出されるのかを発見していくプロジェクトです。

◼︎precogの業務

イベント・公演制作/国際交流/地域活性

◼︎プロジェクト期間

2021年7月13日(火)〜17日(土)

◼︎プロジェクト体制

主催:一般社団法人ドリフターズ・インターナショナル
助成:国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造協働助成
協力:Komunitas Sakatoya[ジョグジャカルタ]
The City of Roxas / Ang Panublion Museum [ロハスシティ]
アトリエ銘苅ベース [那覇]
全国小劇場ネットワーク[日本]
制作:株式会社precog

◼︎関連リンク

特設サイト:https://jejak-tabi.org/naha-ja-2021/
動画アーカイブ:ドリフターズ・インターナショナルYouTubeチャンネル

作品概要

THEME:Contact/Zone

2021年の「Jejak- 旅 Exchange」では、「Contact/Zone」というテーマの元、過去にこのプログラムの開催の場となった東南アジア3都市のアートコミュニティに、沖縄のアーティストを紹介することに注力していきます。ジョグジャカルタ(インドネシア)、2018年にこのプログラムの第一回が開催されたクアラルンプール(マレーシア)、そして、世界的なパンデミックの発生直前、ロハス・シティでの開催が叶わず、2020年に予定されていたプログラムのうち半分の実施会場となったマニラ(フィリピン)の3都市です。

当初、2020年の8月から9月にかけて開催される予定だった今回の那覇編では、「Contact/Zone」というテーマを掲げています。これは、歴史人類学者で批評家のジェームズ・クリフォードが、1997年の著書『ルーツ―20世紀後半の旅と翻訳』で提唱した「コンタクト・ゾーン」という概念に着想を得ています。コンタクト/ゾーンとは、固定されたいくつもの点の間に位置するような場所を指す言葉です。それは、常に移動し続けているような場所―国家、人々、地域性といった概念の狭間で、複数の文化が監視されながらも侵犯し合う境界線上に存在するような場所のことです。世界中で国境が閉ざされ、身体の移動が制限されている今、私たちの日々の経験に符号する言葉ではないでしょうか。今や、一つ一つの都市は閉ざされた「ゾーン」となり、その外とコンタクトをとるためには、創造性と想像力が要請されるのです。

コンタクト/ゾーンとは、まさにそうして創造/想像された、境界線の駆け引きの場です。我々が共に苦境から立ち直るための根を張り、繋がり、そして不確かな状況に直面するなかでも繋がり続けるための場所なのです。

プロセス

「Jejak」は、同じパフォーマンスを二都市で公演した場合に、現地の観客がどう受け取るのか、現地のアーティストやプロデューサーと密にコミュニケートする場を作ろう、と始まったプロジェクト。アジアのアーティストや彼らの作品のコンテクスト、背景のようなものがアジア内で共有されていないことへの危機意識や、アジアのローカル同士がお互いの地域で何が起きているかを知らず、アジアの舞台芸術史が更新されていない現状認識からスタートしたものでした。

3年間の「Jejak」プロジェクトの最終年度で、一旦の区切りとなる2021年。当初想定していたのは、沖縄の人たちを主な観客とする那覇でのイベント。新型コロナ感染拡大の影響で開催が難しくなったため、これまで「Jejak」を開催してきた東南アジア各都市の人たちを観客とし、沖縄のコンテクキストを発信してフィードバックをもらう「交流」に方向性を変更することに。ヘリー・ミナルティ氏、野村政之氏、中村茜のキュレーター3名によって決定されたプログラムを、precogが制作チームとしてつくり上げていきました。

世情や宗教など、地域それぞれのペースや特性の違いに直面しながらも、現地のコーディネーターやスタッフの人たちをパートナーとして巻き込み、彼らの主体性を重視しながら進めていきました。

▷ドリフターズインターナショナルnote 舞台芸術を通じた新たな国際交流のかたち

成果

■オンラインでリアルに近い密度の交流に

クアラルンプールは政治や天気に通信環境が左右されやすいため、リアルに集まることが重要視されています。オンライン開催になりましたが、リアルな集まりに匹敵する交流を模索。那覇対アジア各地と、プログラム毎に1つの土地とつなぎ、密度の高い交流を生み出すことができました。

「踊ることは知ること〜琉球舞踊と組踊」と題して開催したレクチャー&ワークショップでは、那覇とクアラルンプールをつなぎ、琉球舞踊と組踊のレクチャーを実施。ウェビナー形式がメインで直接対話ではなかったものの、チャットでたくさんの意見や感想が。例えばレクチャーでは「女性の役を男性が演じることについて社会的な批判はあるのか?」「現代に創作する場合は音楽や型を新たに作れるのか?」など、踊りや文化という視点からの質問が寄せられました。

実技にフォーカスしたワークショップパートでは、動きかたや化粧、衣装のレクチャーや舞踊を引きで見せたり、最後はみんなでカメラオンで踊ってみたり。琉球音楽を初めて聞く参加者が大いにも関わらず、すんなりと動きを真似ている様子も見られ、パフォーマンスという共有事項を通して余計な先入観なく入り込んでもらえたのかもしれません。

▷現地レポート Jejak-旅 Exchange 2021:「踊ることは知ること〜琉球舞踊と組踊」を振り返って:アドリアーナ・ノルディン・マナン

■ジャンルにとらわれない幅広い観客

レクチャー&ワークショップ「踊ることは知ること〜琉球舞踊と組踊」の参加者は「ASWARA」(National Academy of Arts Calture and Heritage=ASWARA – マレーシア国立芸術文化遺産大学)のダンスを学んでいる学生が中心でしたが、ダンスをやっていないと思われる学生もマレーシア中の大学から参加してくれ、沖縄自体に興味がある人も多い印象でした。

また、フィリピンの3会場(Ang Panublion Museum / Destiny City Church / Green Papaya Art Projects)と沖縄を結んで行ったキュレーター・トーク&ディスカッション「群島アジアにおける共振ー沖縄から見る表現・行動・アート」でも、現地コーディネーターのGreen Papaya Art Projectsが市内のミュージアムや教会でパブリック・ビューイングを開き、多様な方々に届けられました。

各地の協力者のおかげで、precogのJejakネットワークが、プロのアーティストや制作者だけでなく、学生などその地域の方々へも広がっていると思います。

▷現地レポート 群島アジアにかける共振−沖縄から考える表現・行動・アート:ドミニク・ジナムパン

■対話を通して那覇と各地との「共通性」を再発見

シンポジウム「アジアに網をかける小劇場の繋がり〜那覇・ジョグジャカルタ」では、那覇、ジョグジャカルタ、横浜の3都市でそれぞれ活動する登壇者がヴィジョンを持ち寄り、それを展開するためのアクションを探っていきました。

登壇者自身が取り組んできた活動、コロナ禍中の活動などを発表し、これまでのそれぞれの手法を前提に、現状や悩みも共有しながらディスカッションしました。それぞれに異なる立場からの多角的な意見交換となり、ローカル×ローカルな交流を実現できました。ひとつのテーマに基づいた議論や、自分のいる場所とは違う場所で何が起きているのかを知ることへの積極性を感じました。

沖縄の社会的問題における問題意識や経験は他のアジア諸国でも共通性が見られ、お互いの社会を背景にした対話も活発に行われました。例えば、石川真生氏の作品は、沖縄の地理的社会的な問題を扱っています。それに呼応して、フィリピンの人たちの欧米に対する意識が共通するものとして返ってきました。

▷現地レポート 報告 Jejak- 旅 Exchange シンポジウム:ムハンマド・アベ

■3年間の歩みを記したArchive Bookを作成

2018年〜2021年の3年間の「Jejak-旅 Tabi Exchange」の事業報告書が完成しました!

日本語版英語版

ギャラリー

広報制作物

関連プロジェクト

関連@オンライン

クレジット

キュレーター:ヘリー・ミナルティ、中村茜、野村政之
コーディネーター:野﨑美樹
共同企画:
Green Papaya Art Projects [マニラ]
Akademi Seni Budaya dan Warisan Kebangsaan(ASWARA)[クアラルンプール]
通訳・翻訳:
[日/英]山田カイル、水野響、田村かのこ、樅山智子(Art Translators Collective)
[日/マレー]上原亜季
[日/インドネシア]野村羊子
テクニカルスタッフ:[キュレーター・トーク&ディスカッション]須藤崇規
ウェブサイト制作:合同会社琉球ラボ
プロジェクトマネージャー:黄木多美子、佐藤瞳(precog)
プロジェクトマネージャーアシスタント:瀬藤朋(precog)

主催:一般社団法人ドリフターズ・インターナショナル
助成:国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造協働助成
協力:
Komunitas Sakatoya[ジョグジャカルタ]
The City of Roxas / Ang Panublion Museum [ロハスシティ]
アトリエ銘苅ベース [那覇]
全国小劇場ネットワーク[日本]
制作:株式会社precog