国際コラボレーション事業の企画・制作

国際交流基金受託事業 ウティット・ヘーマムーン×岡田利規×塚原悠也『プラータナー:憑依のポートレート』東京公演

  • CATEGORY
  • イベント形態|トーク・シンポジウム, パフォーマンス, ワークショップ
  • precogの業務|イベント制作, 国際事業, 教育普及, 人材育成, 広報PR
  • 表現分野|演劇
  • 開催年|2019

プロジェクト概要

国際交流基金アジアセンターとの共同制作による、3年あまりの月日をかけた国際コラボレーション。タイ現代文学の最前線を担う小説家、ウティット・ヘーマムーン氏の小説『プラータナー:憑依のポートレート』を岡田利規の演出によって舞台化しました。セノグラファーにcontact Gonzoの塚原悠也氏を迎え、俳優はバンコクでのオーディションで選出。4時間にもおよぶ大作を、演出助手や技術スタッフ含めタイからのクリエーション・メンバーとともに作り上げました。

precogは、タイと日本のクリエーション・メンバーをコーディネートし、プロジェクトの企画・制作を担当。また、作品への理解を深めるためのスクールやワークショップの開催、ポストパフォーマンストークの実施、広報ツールの作成などを通して、新たな体験と観客の創出に取り組みました。

◼︎precogの業務
イベント/公演制作, 人材育成・コーディネート, 国際交流, 広報・PR, 教育普及, 票券/客席デザイン
◼︎プロジェクト期間
2016年11月〜2019年7月
◼︎プロジェクト体制
主催: 国際交流基金アジアセンター
共催: 東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
企画制作: 株式会社precog
製作: 国際交流基金アジアセンター、株式会社precog、一般社団法人チェルフィッチュ
作品制作助成: アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、公益財団法人セゾン文化財団
◼︎関連リンク
公式サイト:https://www.pratthana.info

作品概要

ウティット・ヘーマムーン×岡田利規×塚原悠也『プラータナー:憑依のポートレート』

2018年にバンコクで世界初演を迎えた『プラータナー:憑依のポートレート』は、タイの現代史と、そこで生きる一人の芸術家を描く物語。国家、政治対立、芸術、セックス、ポップカルチャー、繰り返し起こる軍事クーデター。それらが渦巻くなかで、彼は人生の幸福と孤独に心と身体を囚われ、引き裂かれ、それでもなお生きることを望み、欲望する。

これは、決してタイだけの物語ではない。今を生きる、私たちとあなたたちの物語。

タイ唯一の舞台芸術賞、IATC Thailand Dance and Theatre Awards 2018のBest Play賞を受賞するなどバンコクの演劇シーンで絶賛を浴び、パリのポンピドゥ・センター(フェスティバル・ドートンヌ・パリ/ジャポニスム2018公式企画)での上演も反響を呼んだ、斬新さ溢れる4時間の大作の、日本初上演。

日時:2019年6月27日 (木) ~7月7日 (日)
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
公式サイト:https://www.pratthana.info/
※本作は、日本と東南アジアの文化交流事業を幅広く紹介する祭典「響きあうアジア 2019」プログラムの一環で公演されました。

プロセス

◼︎長期にわたる国際プロジェクトの企画・制作

1年目はリサーチとパートナー探し、2年目にオーディションと脚本執筆・翻訳を行い、3年目にタイでクリエーション・世界初演後、パリにて発表。翌年2019年6月に、東京で上演しました。国際交流基金アジアセンターと時間をかけて作品の意義を共有し、国際共同制作をアジアで行うときの方法論のアップデートにも取り組んだ、初めての長期プロジェクトとなりました。

◉社会的背景をふまえた制作

リハーサルまでのプロセスに時間をかけたことも当プロジェクトの大きな特徴です。タイ語の小説を日本語に翻訳し、演出家・岡田利規が脚本をつくる作業と、日本語からタイ語に再び翻訳する作業を重ねながら、ドラマトゥルクの福冨渉やタイの演出助手のウィチャヤ・アータマート、制作の川崎陽子、プロデューサーの中村を含めて何度も推敲。

俳優のオーディションやタイ側のスタッフの人選は、政治的な思想などセンシティブなことも意見交換し把握しながら時間をかけて慎重に取り組みました。

◉海外のクリエーション・メンバーとの協働

タイからの俳優と演出助手、技術チームは総勢17名に。使用言語や国籍が異なる参加メンバーに細やかな対応とケアを行いつつ、プロジェクトの共通認識をつねに確認・アップデートすることを大切にしました。日本とタイという国境を越え、大きな信頼でつながった素晴らしいチームでのクリエイションになりました。

▷note 『プラータナー』公演終了報告――岡田利規と12人の俳優・演出助手の言葉

◉東京公演を見据えた広報活動

日本のアーティストによる海外公演も報じられにくい現状があるため、バンコク初演時に日本の批評家やライターにも観劇してもらい、作品に関連する場所のツアーや、演出助手や俳優からのプレゼンの機会を設けました。彼らの言葉で語ることを通して、作品の意義を伝え、日本の演劇批評家やライターが作品を絶賛してくれたことも、東京公演の前評判へとつながりました。

◼︎舞台芸術の裾野を広げる広報活動

2019年6月の東京公演では、日本人には馴染みの薄いタイの歴史を描く小説をもとにした全編タイ語上演の舞台作品を、同時代の芸術として日本の観客に届けるにはどうすればよいか、どうしたら日本の観客が「自分ごと」として捉えられるかを考え、様々なアプローチを設計しました。

◉ 『プラータナー』観劇ガイド

安心して公演に迷い込むための観劇ガイド(タブロイド)を各所で配布。当日パンフレットとして来場者全員にお渡しし、プロジェクトとその背景を知る入口としました。

▷WEB 『プラータナー』観劇ガイド

◉『プラータナー』スクール

今までにない切り口で参加できるスクールを、ワークショップデザイナーの臼井隆志氏とデザインリサーチャー/グラフィックレコーダーの清水淳子氏と開催しました。お客さん同士の感想共有を導いたり(ファシリテーション)、演劇体験を記録すること(グラフィックレコーディング)に挑戦するプログラムといった、新たな演劇の入り口をデザインすることで、多くの方に参加いただくことができました。

▷note 新しい演劇体験の挑戦、はじめます ――劇場を「わからないを楽しむ場」にする4時間の実験
▷note 演劇を、グラフィカルに語ってみませんか? ――視点を削ぎスピーディに描写する演劇グラレコワークショップ
▷note 言葉にできない体験を描くと、解釈はより広く深まっていく。演劇グラフィックレコーディングの作品全公開!

◉観劇レビュー公募

観劇した人が、作品により深い関心をもって継続的に関われる接点をつくるため、「AWRD(株式会社ロフトワーク)」による「観劇長文レビュー」のコンペティションを実施したり、Twitterや感想BOXからの「観劇短文レビュー」の募集を行いました。観客自らが自分の言葉で綴ったレビューがたくさん寄せられました。

▷note 『プラータナー』短文レビュー募集――結果発表!

◉あなたのポストトーク

観客の創造力を可視化するための参加型プログラム「あなたのポストトーク」を全2回実施しました。観劇後に観客が感想を語り合う場を設けることで、作品への解釈がさらに深まる時間となりました。

▷note 私たちは、ほの暗い「広場」に集まり、すれ違う ――演劇『プラータナー』参加型企画「あなたのポストトーク」に寄せて

◉ 書籍『憑依のバンコク オレンジブック』

クリエーションメンバーの思想や舞台ならではの熱量を伝え、演劇作品を豊かにアーカイブするものとして公式ガイドブック『憑依のバンコク オレンジブック』(白水社)を出版。作品に内包される膨大なタイの歴史的背景やタイの現状を深く知ることで、観劇体験をより一層深めることができる一冊となりました。批評やバンコクガイドなども掲載されています。

憑依のバンコク オレンジブック

▷note 演劇の二次創作はもっとあっていい。未来のクリエーションのために、アーカイブはどうあるべき?
▷SHOP ウティット・ヘーマムーン 岡田利規 著『憑依のバンコク オレンジブック』

成果

◼︎ 「読売演劇大賞 選考委員特別賞・優秀スタッフ賞」受賞

プロジェクトの成果が高く評価され、「読売演劇大賞」で脚本・演出を担当した岡田利規が「選考委員特別賞」を、セノグラフィー(舞台美術)を担当した塚原悠也氏が「優秀スタッフ賞」を受賞しました。

◼︎ 海外招聘事業での集客に成功

海外招聘事業や国際共同制作作品の、日本における近年の集客不振、アジアの文学・舞台芸術の日本における認知度の低さにも関わらず、口コミが話題を呼び、開幕してからは連日客席を増席、当日券も完売と好評を得ました。

◼︎ 新しい創客モデルを提示

ワークショップや書籍の発行などを通じて、上演中以外でも作品に興味を持ってもらえるきっかけを作り、公演の観客に限定されない創客のモデルを提示することに成功しました。

ギャラリー

広報制作物

メディア掲載情報

プレスリリース

関連アーティスト

関連ショップ

クレジット

原作: ウティット・ヘーマムーン
脚本・演出: 岡田利規
セノグラフィー・振付: 塚原悠也
演出助手: ウィチャヤ・アータマート
原作翻訳・日本語字幕制作: 福冨渉
出演: ジャールナン・パンタチャート、ケーマチャット・スームスックチャルーンチャイ、クワンケーオ・コンニサイ、パーウィニー・サマッカブット、ササピン・シリワーニット、タップアナン・タナードゥンヤワット、ティーラワット・ムンウィライ、タナポン・アッカワタンユー、トンチャイ・ピマーパンシー、ウェーウィリー・イッティアナンクン、ウィットウィシット・ヒランウォンクン
衣裳: 藤谷香子
照明: ポーンパン・アーラヤウィーラシット
照明オペレーション: ラポンパット・ドゥアンプローイ
照明コーディネート: 三浦あさ子
音響: 荒木優光
音響アシスタント: 植松幸太
セノグラフィーアシスタント・映像: 松見拓也
舞台監督: 大田和司
脚本翻訳: ムティター・パーニッチ
翻訳協力: パタラソーン・クーピパット、マッタナー・チャトゥラセンパイロート 
脚本英語翻訳: オガワアヤ、ササピン・シリワーニット
字幕英語翻訳: オガワアヤ
字幕操作: ミミー・ダーンターウォンジャローン
通訳: パタラソーン・クーピパット
統括プロデューサー: 中村茜
プロダクション・マネージャー: 川崎陽子
アシスタント・プロダクション・マネージャー: 加藤奈紬、﨑山貴文
制作協力: タナノップ・カーンチャナウティシット
票券: 谷津有佳
当日運営: 丸山怜音
記録映像: 須藤崇規
記録写真: 高野ユリカ

広報
宣伝美術・撮影: 松見拓也
特設ウェブサイト: 石黒宇宙
告知映像: 金巻勲、荒木優光
企画協力: 金森香、添田奈那、AWRD(ロフトワーク)
英語翻訳: ジェームス・ケティング
『プラータナー』観劇ガイド: 臼井隆志、あかしゆか、関川航平、藤井瑶、加藤甫、松見拓也、福冨渉、藤末萌、中村茜
『プラータナー』スクール: 臼井隆志、清水淳子、加藤甫
マネジメント: 藤末萌、増崎真帆、原口さとみ
アシスタント: 加藤奈紬
広報協力: 島貫泰介
ポスト制作: 山本ゆい
パンフレットデザイン: 藤井瑶

公演記録集『憑依のバンコク オレンジブック』
著者: ウティット・へーマムーン&岡田利規
企画・製作: 国際交流基金アジアセンター、株式会社precog
企画・ディレクション: 中村茜
アートディレクション: 松見拓也
デザイン: 仲村健太郎、小林加代子
執筆・構成: 島貫泰介
写真: 松見拓也、森栄喜
翻訳: 福冨渉、山口真樹子、並河咲耶、田村かの子、パタラソーン・クーピパット、宇戸優美子
編集: 川崎陽子、鈴木真子、福冨渉、和久田賴男(白水社)
地図制作: 地図屋もりそん
印刷・製本: 株式会社大伸社
発行: 白水社

原作小説『プラータナー 憑依のポートレート』
著者: ウティット・ヘーマムーン
翻訳: 福冨渉
発行: 河出書房新社

株式会社precog
代表取締役・ディレクター: 中村茜
チーフプロデューサー: 黄木多美子
シニアプロデューサー: 平岡久美
チーフアドミニストレーター: 兵藤茉衣、森田結香
プロデューサー: 水野恵美、﨑山貴文
アシスタントプロデューサー: 加藤奈紬
票券: 谷津有佳
デスクアシスタント: 岩井美菜子、北堀あすみ、木村さや香、栗田結夏、齊藤浩子、佐藤瞳、髙橋健太郎、髙畑もなみ、寺田凜、美和咲妃、渡辺元紀

東京芸術劇場
技術統括: 白神久吉
舞台: 奥野さおり、渡邉武彦//佐々木渉、大川英憲
照明: 井上武憲、安藤達朗//川守田英樹、関野彰彦
音響: 石丸耕一//平本顕栄、野島旭貴
制作: 立石和浩、鶴岡智恵子、吉田直美、橋本奈々美
広報: 前田圭蔵
票券: 井上由姫

主催: 国際交流基金アジアセンター 
共催: 東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
企画制作: 株式会社precog
製作: 国際交流基金アジアセンター、株式会社precog、一般社団法人チェルフィッチュ 
作品制作助成: アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、公益財団法人セゾン文化財団
協力: チュラロンコーン大学文学部演劇学科、シーナカリンウィロート大学 College of Social Communication Innovation、Democrazy Theatre Studio、contact Gonzo、B-Floor Theatre、DuckUnit、FAIFAI、For What Theatre、Splashing Theatre Company、浦谷晃代、田坂博子、ケティング菜々、一般社団法人 P、ゲンロンカフェ、内田圭、臼井沙代子、ロフトワーク、サウンドウィーズ、小早川保隆、(株)ARTCORE、鈴木康郎、山吹ファクトリー、金井美希、蘭智咲、竹林凜音