2022.03.18

precog代表・中村茜が第72回芸術選奨新人賞を受賞!

precog代表の中村茜が、令和3年度(第72回)文化庁芸術選奨・文部科学大臣新人賞(芸術振興部門)を受賞いたしました。

チェルフィッチュニブロール等のプロデュースや、ママリアン・ダイビング・リフレックス/ダレン・オドネル『私がこれまでに体験したセックスのすべて』、いつでも誰でも、どこからでも繋がれるオンライン劇場「THEATRE for ALL」など、これまでの活動を評価していただきました。


今日はご報告とお礼があります。去る3月15日に文化庁主催の芸術選奨文部科学大臣賞新人賞の授賞式に参加して参りました。すでに多数の方からお祝いの言葉もいただきまして、どうもありがとうございます。

この度の受賞は、これまで活動を共にしてきたプリコグのメンバーをはじめ、協働させていただいてるアーティストやスタッフ、クリエーター、われわれの活動をご支援いただいている関係者の皆さんを代表していただいたものだと思っています。
皆様にはこの場を借りて改めて感謝の気持ちを伝えさせてください。本当にありがとうございます。

中村茜、芸術選奨表彰式での記念写真

昨年は、これまで17年のプリコグの活動のなかでも最大規模の事業となったオンライン劇場・THEATRE for ALL(TfA)の立ち上げの一年でした。(個人的にも第二子を夏に出産し、大きな節目の年となりました。)TfAでは、舞台作品の映像化に加え、映画やメディア芸術などの映像に、多言語字幕や手話通訳、音声ガイドなどの情報保障をつけた動画を80作品ほど配信させていただくなかで、創作活動を支える多くの方々との協働、お力添えに恵まれました。そのたくさんの新しい出会いのなかで私たちが得た、興奮や喜び、学びや刺激は、これからの活動に不可欠な大切なものであり、これから一つずつ丁寧に水をあげて育てるべき種として芽吹き始めています。このような節目のタイミングで、芸術選奨をいただいたことは、背中を押していただいたように嬉しく感じていると同時に身が引き締まる思いです。

これまでのわたしたちの活動を振り返ると、“横断と翻訳”ということが大きな活動のテーマとなってきました。演劇やダンス、美術や文学など表現領域にまたがってプロジェクトを展開する横断性と、国内外のさまざまな地域の文脈に応じて作品を届ける翻訳性です。そして、2019年日本財団が主催するTrue Colors Festival ~超ダイバーシティー芸術祭~に参画させていただいたことを機に“アクセシビリティー”(アクセスのしやすさ)と“インクルージョン”(包摂)ということが活動のテーマとして加わりました。私たちは、この新たに加わった2つのテーマに関して、まだまだ試行錯誤しはじめたばかりですが、コロナ禍でやむなく中止となってしまったフェスティバルで描いていた理想像を追い求めることが、TfAの始動によってまた可能になりました。そして、これから10年はTfAを継続させ、このテーマに寄り添いたいと思うようになりました。10年は続けないと見てみたい地平線は見えてこない、そのぐらい時間と根気のいる冒険のようで気が遠くなり、足がすくむこともあります。同時に、創作活動を通じてジェンダー、セクシャリティ、世代、障害、言語や文化、社会階層の違いがある人たちが混ざって繋がり、コミュニケーションが生まれる場ができたとき、新しい創作のアイディアが見つかったり、新たな視点に気づいたりしてワクワクすることがたくさんあるので、この冒険には強く心を惹かれています。まだ小さい混ざり合いですが、この小さい実験の場をより広く社会に、世界に、繋げていきたいと思いますし、未来の芸術空間がもっと色んな人たちの笑顔や問いが行き交う場として(時には怒りや悲しみなどの感情の交感や調整も含めて)機能できるよう、私たちなりに考え、これからまた一歩一歩実践と実験を続けたいと思っています。 

中村茜

文化庁報道発表より
受賞理由
中村茜氏は、岡田利規、 矢内原美邦らアーティストらと演劇・舞踊・美術等のジャンルを越境するプロジェクトを仕掛けてきた。令和3年は、 「誰もが、いつでも、どこからでも繋がれる劇場」をとバリアフリー型動画配信事業 THEATRE for ALLを立ち上げ、 またTrue Colors Festivalにおいてダイバーシティをテーマに多国籍のアーティストや多様なシニアたちとドキュメンタリー演劇に挑むなど、コロナ禍でも舞台芸術のすそ野の拡大に果敢に取り組む姿勢を評価し今後のさらなる活躍を期待したい。
選考経過
芸術振興部門では、選考審査員及び推薦委員から、文部科学大臣賞候補者として11名、文部科学大臣新人賞候補者として11名の推薦があった。第一次選考審査会において、選考審査員は芸術振興 部門の趣旨にふさわしい候補者を、文部科学大臣賞から4名、文部科学大臣新人賞から4名に絞り込み、第二次選考審査会に臨んだ。いずれもコロナ禍における取組みがこれまで以上に顕著であったが、慎重な議論の結果、文部科学大臣賞にダンサーの川口隆夫氏、文部科学大臣新人賞にパフォーミングアーツ・プロデューサーの中村茜氏を選出した。
(中略)
一方、分野を越境するプロデュースを精力的に仕掛けてきた中村氏は、動画配信事業 「THEATRE for ALL」を立ち上げ、多言語対応や手話通訳、バリアフリー字幕など 「誰もが、いつでも、どこからでも「繋がれる劇場」の実現に尽力した点が評価された。

文化庁芸術選奨は、演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等、メディア芸術の11分野において、その年に優れた業績をあげ、新生面を開いた者に贈られる賞です。