多様な観客を創出する新しい観劇体験の企画・制作

チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム山』東京公演

  • CATEGORY
  • イベント形態|オンライン配信, パフォーマンス, ワークショップ, 参加型
  • precogの業務|イベント制作, バリアフリー, 教育普及, 広報PR
  • 表現分野|演劇
  • 開催年|2021

プロジェクト概要

演劇カンパニー・チェルフィッチュが美術家・金氏徹平と取り組む新作シリーズ。人間中心主義の逸脱をテーマに掲げる本作は、新型コロナウイルスという大きな力に対峙した今日の社会に何を問うのか。2019年10月『消しゴム山』初演以降、美術館版『消しゴム森』、日常空間での試みを発信する『消しゴム畑』など一つのコンセプトを異なる場所にインストールすることでさまざまに姿を変えてきた本作が、再び劇場へと回帰します。

precogは、通常の公演企画・制作に加え、これまで劇場に足を運びづらいと感じていた方にもリーチする、まったく新しい観劇体験の企画・制作を担当。映像作品の配信やワークショップの実施、アクセシビリティを高める取り組みなど、劇場で観劇するだけにとどまらない作品との関わりを創出しました。

◼︎precogの業務
公演制作, 広報, バリアフリー対応, ワークショップ開発, 客席デザイン
◼︎プロジェクト期間
2019年6月〜2021年2月
◼︎プロジェクト体制

『消しゴム山』東京公演
主催:一般社団法人チェルフィッチュ、株式会社precog
共催:公益財団法人としま未来文化財団(あうるすぽっと)
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
公演助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会
◼︎関連リンク

公式サイト:https://www.keshigomu.online/

作品概要

人間のスケールを脱し、世界を見る目を更新する演劇
人、モノ、時間、空間、言葉が、未知のすがたで現れるーー

演劇という人間のための営みを通して、人間とモノ、それらを取り巻く環境とがフラットな関係で存在する世界を生み出すことはできるだろうか。

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市。津波被害を防ぐ高台の造成工事は驚異的な速度で風景を人工的に作り変えつつあった。岡田利規がその光景を目撃したことから構想された「人間的尺度」を疑う作品は、彫刻の領域を拡張し続ける美術家・金氏徹平をコラボレーターに迎え『消しゴム山』として実現した。無数にモノの並ぶ空間で俳優はモノと新たな関係を構築し、それを目撃する観客もまた、世界を新たな目で見ることになる。

プロセス

◼︎作品の構想とコンセプトの展開

作・演出の岡田利規が東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市を2017年に訪れ、驚異的な速度で人工的に作り変えられる風景を目の当たりにしたことをきっかけに本作の構想が始まりました。コラボレーターにコラージュを主な手法とし、演劇的な視点を貪欲に取り込み創作の領域を拡張させる美術家・金氏徹平を迎えて制作。

「消しゴム」シリーズの「人間的尺度」を疑うというコンセプトは、様々な空間で異なる形式の作品として展開することを当初より計画。precogはその実現とさらなる広がりを創出すべく、作品への理解や質を高めるアプローチをデザインしました。

◼︎バリアフリーコンテンツの企画・制作・運営

precogでは、車椅子利用者・補助犬利用者・視聴覚障害者・親子連れ・英語話者など、多様な方々に開かれた公演を目指し、作品や劇場へのアクセシビリティを高める企画を考案しました。

◉鑑賞マナーハードル低めの回

お子様連れのご家族や、障害のある方などなかなか劇場に足を運びづらいと感じている方にも気兼ねなくご観劇いただくために、鑑賞マナーを少しだけゆるくする客席のあり方を企画しました。この回のみ、手話通訳や東池袋駅までのお迎えも実施。

鑑賞マナーハードル低めの回:お子様連れで鑑賞 鑑賞マナーハードル低めの回:鑑賞マナーをゆるめに

▷note 鑑賞マナーをゆるくした『消しゴム山』上演回レポート ~子どもも障害者も劇場へ~

◉エクストラ音声貸出

通常回上演の構成要素に、ナレーション音声(作・演出:岡田利規の書き下ろした『山がつぶやいている』というテキストを、俳優の太田信吾が読み上げたもの)が重なるイヤホンの貸出を企画。上演と合わせて聞くことで、エクストラな『消しゴム山』が姿を現し、視覚だけではない観劇体験をお届けしました。

エクストラ音声イヤホンをつけて鑑賞 エクストラ音声イヤホン貸出デスク

▷note アーティストの考えるバリアフリー−岡田利規インタビュー

◉客席設計・当日運営

車椅子席や介助者1名無料でのご予約、サポートが必要な方への通路側席のご用意や混雑を避けた優先入場など、多様なお客様を受け入れる客席設計を行いました。会場受付では筆談ボードを用いるなど、運営上の工夫も重ねています。

客席への案内 筆談ボード

▷note precogの鑑賞サポート 〜劇場・イベント編〜

◼︎ ラーニングプログラムの企画・制作

一見難しそうな作品でも、観賞のための視点が得られると、たちまち自分の世界が無限に広がり、体験が豊かになります。作品への多様な入り口をつくり、学びの場となるよう企画しました。

◉解説動画

作品を感じたり、解釈したりするためのウォーミングアップとなる動画をバリアフリー型の動画配信プラットフォーム『THEATRE for ALL』で配信。岡田利規と金氏徹平による『消しゴム山』の解説動画を配信しました。

▷YouTube 【2つのQ】チェルフィッチュ×金氏徹平「消しゴム山」「消しゴム森」

◉こども向け参加型ワークショップ

実際に身体を動かしながら、作品自体や作品から広がる世界について学んだり、自分たちが感じる世界をより深く探求するようなワークショップを対話型で実施。「チェルフィッチュといっしょに半透明になってみよう」と題して、チェルフィッチュの俳優たちと「消しゴム」シリーズで開発された演劇メソッド「半透明になる」ことを実験。俳優が講師となり参加者と一緒に映像作品を作るオンラインワークショップを実施しました。

▷THEATRE for ALL note モノがヒトを「当たり前」から開放する:「チェルフィッチュといっしょに半透明になってみよう」レポート
▷WORKS コネリング・スタディ@オンライン「チェルフィッチュといっしょに半透明になってみよう」

◼︎ オンライン配信の企画・制作

劇場に行けなくても、劇場に行く前にも、公演を観た後でも、いつでもどこでも楽しめるコンテンツとしてオンラインでの配信を企画しました。劇場では体験できないもうひとつの観劇体験です。

◉ライブ配信・アーカイブ配信

「消しゴム」のコンセプトを体現する独自のアプローチで劇場からのライブ配信を実施。また、配信版『消しゴム山は見ている』をバリアフリーのオンライン劇場『THEATRE for ALL』にて日英字幕つきでアーカイブ配信。演劇の新たな楽しみ方を生み出しました。

ライブ配信・アーカイブ配信 ライブ配信・アーカイブ配信

▷note 劇場体験をなぞらない映像配信—『消しゴム山は見ている』配信チームインタビュー

◉消しゴム森360°映像配信

2020年2月に金沢21世紀美術館で行われた『消しゴム森』の展示空間を、360度カメラを用いてマルチアングルで撮影。360度かつ複数の視点で、展示と俳優のパフォーマンスを追体験することができる映像を『THEATRE for ALL』 にて、日本語字幕・英語字幕付きで配信。「消しゴム」シリーズへの理解を深める体験をデザインしました。

消しゴム森360°映像配信

▷THEATRE for ALL 消しゴム森360°映像配信

◼︎メディア展開の企画・制作

コンセプトをより深めるものとして書籍を出版。岡田利規による小説も発表されました。

◉書籍版『消しゴム石』

劇場版『消しゴム山』、美術館版『消しゴム森』の戯曲や上演記録、インタビュー、批評などが凝縮された消しゴムシリーズの書籍版『消しゴム石』を出版。「消しゴム」シリーズを読み解く上で鍵となる一冊を作成しました。

書籍版『消しゴム石』

▷SHOP チェルフィッチュ×金氏徹平『消しゴム石』

◉小説『消しゴム式』

岡田利規が日常空間版『消しゴム畑』を元に書き下ろした小説『消しゴム式』(講談社「群像」2021年3月号掲載)を発表。

小説『消しゴム式』

成果

◼︎ひとつのコンセプトを多様なアウトプットで展開

劇場からの映像配信や書籍の出版、ワークショップの実施や解説動画の配信など、ひとつのコンセプトをさまざまなアウトプットで展開することで、劇場で観劇するだけにとどまらない多様な観劇体験を生み出すことができました。

◼︎アーティストによる新たな表現への可能性

アーティスト自身が多様な観客を想定し、「エクストラ音声貸出」を実施。インクルーシブな視点によって、視覚だけではない新たな表現・観劇体験の可能性を広げることができました。

◼︎コンテンポラリー芸術のバリアフリー化

実験的でコンテンポラリーな芸術をバリアフリー化して届ける経験を積み上げました。演劇のバリアフリー化のフロントランナーとして斬新な企画を打ち出し、自分たちもやってみたいと思う人が増えるよう多様なアプローチを試みていきます。

ギャラリー

広報制作物

メディア掲載情報

プレスリリース

関連アーティスト

関連プロジェクト

関連ショップ

関連@オンライン

クレジット

作・演出:岡田利規
セノグラフィー:金氏徹平
出演:青柳いづみ、 安藤真理、板橋優里、 原田拓哉、 矢澤誠、米川幸リオン

衣裳:藤谷香子(FAIFAI)
照明:髙田政義(RYU)
音響:中原楽(ルフトツーク)
映像:山田晋平
技術監督:鈴木康郎
舞台監督:湯山千景
演出助手:和田ながら
英語翻訳:アヤ・オガワ

プロデューサー:黄木多美子
アソシエイト・プロデューサー:田中みゆき

東京公演
舞台監督:川上大二郎
舞台監督助手:松嶋柚子
照明オペレーター:葭田野浩介
音響オペレーター:上島由起子
映像オペレーター:樋口勇輝
字幕オペレーター:田澤瑞季
撮影ヘアメイク:廣瀬瑠美

プロダクションマネージャー:水野恵美
制作・広報デスク:遠藤七海、佐藤瞳

[アクセシビリティ制作]
プロデューサー:兵藤茉衣
プロダクションマネージャー:和田ながら

[エクストラ音声貸出]
声:太田信吾
音声プランナー:中原楽
音声オペレーター:安藤誠英
録音:葛西敏彦
プロダクションマネージャー:和田ながら
協力:岡野宏治、中川美枝子

[ライブ配信]
映像ディレクション:山田晋平
テクニカルコーディネート:DrillBros(ホンゴウタカシ+イトウユウヤ)
テクニカルサポート:岡本彰生(ネーアントン合同会社)
撮影:冨田了平、三上亮、渡辺俊介
配信スタッフ:會澤重徳、大藤正教、菊地英治、原田崇、森大三、山下萌菜
音声プランナー:中原楽
音声オペレーター:葛西敏彦
プロダクションマネージャー:土屋光(SCOOL)
機材協力:株式会社ハーツ、ネーアントン合同会社
協力:Palabra株式会社

[鑑賞サポート]
プロデューサー:兵藤茉衣
制作アシスタント:林芽生
手話通訳:小松智美(NPO法人 シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)
協力:認定NPO法人 ことばの道案内

グラフィック:金氏徹平
宣伝美術:Werkbund
ウェブサイト制作:HAUS
記録写真撮影:高野ユリカ
大道具製作:坂本遼

広報:村上晴香
広報ライティング:山﨑健太
票券:谷津有佳
制作デスクアシスタント:大川文乃、関萌美
当日運営:青木佳、岩井美菜子、岩上涼花、犬山心、小黒典子、小野寺夏音、小野寺研斗、倉橋真奈美、栗田結夏、國分郁子、齊藤浩子、鈴木千尋、鶴飼奈津美、長坂望絵、西多恵子、宮本名域、美和咲妃、森田結香、山崎健太

企画制作:株式会社precog
代表取締役/エグゼクティブプロデューサー 中村茜
執行役員/広報・ブランディングディレクター 金森香
シニアプロデューサー 平岡久美

アーティスト事業部
チーフプロデューサー 黄木多美子
プロデューサー 水野恵美
プロジェクトマネージャー 佐藤瞳
プロジェクトアシスタント 遠藤七海、大川文乃、瀬藤朋、陳艾文

バリアフリーコミュニケーション事業部
チーフプロデューサー 兵藤茉衣
プロデューサー 篠田栞
票券/プロジェクトマネージャー 谷津有佳
プロジェクトマネージャー 栗田結夏、國分郁子、関萌美、西山葉子、日比野紗季
広報・マーケティング 北堀あすみ、田井中未来
プロジェクトアシスタント 小黒典子、小野寺研斗、小林あずさ、長谷川葵、林芽生、西多恵子、箕浦萌

アドミニストレーション部
チーフアドミニストレーター 森田結香
アドミニストレーションデスク 美和咲妃
デスクアシスタント 岩井美菜子、金井順子、河野真紀、齊藤浩子

製作:一般社団法人チェルフィッチュ

共同製作:
〈消しゴム山〉 KYOTO EXPERIMENT、Wiener Festwochen、Festival d’Automne à Paris、Künstlerhaus Mousonturm Frankfurt
〈消しゴム森〉 金沢21世紀美術館

協力:コネリングスタディ/山吹ファクトリー、急な坂スタジオ、京都市立芸術大学

京都芸術センター制作支援事業

本プロジェクトは、『消しゴム山』(初演:2019年10月KYOTO EXPERIMENT)、『消しゴム森』(初演:2020年2月金沢21世紀美術館)の両バージョンからなる。

主催:一般社団法人チェルフィッチュ、株式会社precog
共催:公益財団法人としま未来文化財団(あうるすぽっと)
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
公演助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)|独立行政法人日本芸術文化振興会

<鑑賞サポート>
文化庁委託事業「令和2年度障害者による文化芸術活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)」
主催:文化庁、一般社団法人チェルフィッチュ

<ライブ配信>
令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業『文化芸術収益力強化事業』
バリアフリー型の動画配信プラットフォーム事業
THEATRE for ALL
主催:文化庁、株式会社precog、一般社団法人チェルフィッチュ

【関連企画】
コネリング・スタディ「チェルフィッチュといっしょに半透明になってみよう」ワークショップ
ディレクター:臼井隆志、中村茜
プロダクションマネージャー:栗田結夏

主催:株式会社precog 山吹ファクトリー、一般社団法人チェルフィッチュ
助成:公益財団法人セゾン文化財団独立行政法人、国立青少年教育振興機構 子どもゆめ基金